4 スーダン情勢
スーダンでは、83(昭和58)年から、北部のアラブ系イスラム教徒を主体とする政府と、南部のアフリカ系キリスト教徒主体の反政府勢力との間の南北内戦が、20年以上継続した。05(平成17)年に南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)が成立したことを受け、国連安保理決議第1590号により設立された国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が展開、CPAの履行支援のための停戦監視などを開始した。09年(同21)年7月、常設仲裁裁判所(PCA:Permanent Court of Arbitration)が南北境界線確定の前提となるスーダン中央部アビエ地域
13の境界線の最終判決を発表し、同年12月末には南部独立及びアビエ地域帰属を巡る住民投票法案が成立した。他方、10(同22)年4月、CPAに基づき、総選挙が実施された。技術的問題や一部野党のボイコットなどはあったものの、投票期間中は大きな治安上の問題も発生せず、選挙民の幅広い参加が得られ、おおむね平和裏に投票が行われた。投票の結果、国民統一政府大統領に現職のバシール大統領が、南部自治政府大統領に現職のサルヴァ・キール南部大統領が、それぞれ当選したことが発表された
14。
同国西部のダルフール地方では、03(同15)年から、アラブ系の政府とアフリカ系反政府勢力の間で紛争が激化した。大量の国内避難民の発生などもあり、国連をはじめとする国際社会はダルフール問題を深刻な人道危機として扱っている。06(同18)年5月に政府と主要な反政府勢力の一部の間でダルフール和平合意(DPA:Darfur Peace Agreement)が成立したことを受け、07(同19)年7月、国連安保理はダルフール国連・AU合同ミッション(UNAMID:AU/UN Hybrid Operation in Darfur)の創設を決定する決議第1769号を採択した。10(同22)年2月にスーダン政府とダルフールの主要反政府勢力「正義と平等運動(JEM:Justice and Equality Movement)」との間で、「ダルフール問題解決のための枠組み合意」が締結されるなど、和平に向けた努力がなされているものの
15、スーダン政府軍と反政府勢力との戦闘が継続して発生している
16。
また、09(同21)年3月および10(同22)年7月、国際刑事裁判所(ICC:International Criminal Court)が、バシール大統領に対して、ダルフール紛争における人道に対する犯罪、戦争犯罪の容疑およびジェノサイドの容疑に基づき、それぞれ逮捕状を発付した。これに対するスーダン政府の対応や、和平プロセス、平和維持部隊などへの影響が注目されている。
13)アビエ地域は南北紛争時の激戦地の一つで、豊富な石油資源が埋蔵されていることなどから南北双方が領有権を主張しており、その帰属は11(平成23)年1月(予定)の住民投票によって決定されることになっている。
15)JEMと並ぶ主要な反政府勢力であるスーダン解放軍アブドゥル・ワヒード派(SLA/AW:Sudan Liberation Army/Abdul Wahid)は、和平プロセスへの関与を拒否している。
16)09(平成21)年、スーダンとチャドの国境付近で両国の武装勢力が衝突したが、10(同22)年2月にバシール大統領とデビー・チャド大統領の首脳会談が開催され、両国は関係改善を試みている。