5 ソマリア情勢
ソマリアでは、91(同3)年以降、無政府状態が継続した後、05(同17)年に「暫定連邦政府」(TFG:Transitional Federal Government)が発足したが、これと対立するイスラム原理主義組織「イスラム法廷連合」(UIC:Union of Islamic Courts)などとの間で戦闘が激化した。06(同18)年12月、エチオピア軍がTFGの要請を受けて軍事介入し、UICを駆逐した。翌07(同19)年1月、AUソマリア平和維持部隊(AMISOM:African Union Mission in Somalia)が創設され、また、08(同20)年8月には、ジブチにおいて、UICなどが結成した「ソマリア再解放連盟」(ARS:Alliance for the Re-Liberation of Somalia)とTFGとの間で、和平合意が締結された。09(同21)年1月、ARS指導者のシェイク・シャリフがTFGの新大統領に選出されたが、TFGの支配地域は、首都モガディシュの一部にとどまっており、全土を掌握していないことなどから、治安回復の見通しは立っていない。09(同21)年5月以降、反政府イスラム武装勢力「アル・シャバーブ」などとTFGとの戦闘が激化し、また、反政府勢力どうしの衝突も発生している。このような中、AMISOMに代わる国連PKOの設立が模索されているものの、ソマリアの治安回復などの前提条件が満たされないため、実現していない。
同国周辺海域では、08(同20)年以降、海賊・武装強盗事案が急増した
17。国連安保理は、同年夏以降5度
18にわたり、各国に海賊対策のための艦船の派遣などを要請する決議を採択した。このような状況の中、現在、各国がソマリア周辺海域に艦船などを派遣し、海賊対策活動を行っている。
17)国際海事局(IMB:International Maritime Bureau)によれば、09(平成21)年にはソマリア海賊による被害が217件(アデン湾で116件、ソマリア沿岸で80件、紅海上で15件、オマーン沿岸で4件、インド洋・アラビア海で各1件)発生した。
18)国連安保理決議第1816号(08(平成20)年6月採択)、第1838号(同年10月採択)、第1846号(同年12月採択)、第1851号(同年12月採択)および第1897号(09(同21)年11月採択)。