< head> 2 サイバー戦に対する取組
第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 サイバー戦に対する取組

 こうしたサイバー空間における脅威の増大を受け、サイバー攻撃への対処やサイバー空間における活動の安全性の確保は各国の軍隊にとって死活的な問題になっており、国防政策においてサイバー戦への取組が重視されつつある。たとえば、サイバー空間における軍の作戦を統括する機関を新設したり、サイバー戦への取組を国防戦略の中の重要な戦略目標と位置づけるなど、各国における取組が進められている。
 米国は、09(同21)年5月に発表された「サイバー空間政策見直し」に基づいて、サイバーセキュリティ調整官をホワイトハウスに新設し、サイバーセキュリティ政策について関係省庁間の調整を行うこととした。国防省では、ゲイツ国防長官が09(同21)年6月にサイバー空間における作戦を統括するサイバーコマンドの創設を決定した。サイバーコマンドは10(同22)年5月に初期運用を開始しており、10月から本格運用を開始することとされている。また、10(同22)年2月に公表された「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)は、国際公共財(Global Commons)として陸・海・空・宇宙とともにサイバー空間を挙げ、国際公共財へのアクセスを保証することが必要だとしている。さらに、サイバー空間における効果的な作戦を、米軍の戦力を強化すべき六つの任務領域のうちの一つとしている。
 北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)においては、最高意思決定機関である北大西洋理事会がNATOのサイバー防衛に関する政策と作戦を統括しており、NATOとしてのサイバー防衛政策を有している。08(同20)年にはNATOサイバー防衛センターが新設され、サイバー戦についての研究などを行っている。
 オーストラリアは、09(同21)年に発表した国防白書の中においてサイバー戦における能力を向上させる必要があるとしている。10(同22)年1月には国防省は国防通信電子局(DSD:Defence Signals Directorate)の下にサイバーセキュリティ運用センターを発足させた。
 韓国は、10(同22)年1月に国防情報本部の下にサイバー戦の計画、実施、訓練及び研究開発を行うサイバー司令部を創設した。

 

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