第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(解説)戦闘機のステルス技術(電波)について

 戦闘機は、その出現以来、常に時代の先進技術の粋が結集され開発されており、現在では米国のF-22に代表されるステルス性や高運動性、高度な電子機器などを備えた戦闘機、いわゆる第5世代機が戦闘力で圧倒的な優位性を誇っています。このため、諸外国では第5世代機のキーテクノロジーであるステルス性などに係わる研究開発が進められている模様であり、今後、これら傾向はさらに加速されるものと考えられます。
 戦闘機の電波に対するステルス性に関して、わが国においてもこれまで地上検証などを行ってきました。これらは、主にレーダー電波の反射波の抑制によりレーダー電波の反射を小さくすること(レーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)を小さくすること)により達成するものです。レーダー電波の反射波の抑制には、電波が到来した方向に返らないように形状により特定の方向に反射させる方法や、電波吸収体によるレーダー波のエネルギーを吸収するなどの方法があります。(図1参照)
 
図1

 戦闘機における主な反射源としては、主翼などの翼の前縁、空気取り入れ口や機体外板のパネルの段差などがあげられます。これらの部位からのレーダー電波の反射を抑制することがRCSの低減につながります。(図2参照)
 
図2

 具体的な、RCSの低減技術としては、機体の形状やパネルの形状、空気取り入れ口ダクトの形状に工夫を施すなどの方法があります。(図3参照)
 
図3

 防衛省技術研究本部においては、このような技術を獲得するための研究として、各種研究を進めてきました。これまで行ってきた地上における研究の集大成である航空機機体全機レベルでのRCS低減技術の検証として、「高運動飛行制御システムの研究」において全機実大RCS模型を製作しフランスにおいて各種データを取得しました。今後は、技術の成立性のみならず、「先進技術実証機の研究」において、実機に適用して実環境下における各種データを取得するとともに、わが国の防空を検討する上において必要となるであろう各種資料を収集していく予定です。

 

前の項目に戻る     次の項目に進む