第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)防衛駐在官として活躍する隊員の声

第11代 在オーストラリア防衛駐在官 1等海佐 永井  一成(ながい かずしげ)

 今年「オーストラリア」という映画が公開されましたが、この映画のシーンにもあるとおり、海も山も自然があふれ、極めて恵まれた環境である反面、夏の乾燥期にはブッシュファイヤーと呼ばれる山火事を警戒する必要のあるワイルドな国、それがオーストラリアです。私が防衛駐在官として勤務する在オーストラリア日本国大使館のある首都キャンベラも、野生のカンガルーを間近に見ることができる荒野に囲まれています。
 わが国とオーストラリアは、第二次世界大戦では敵であった国同士のため、終戦後は関係の再構築からスタートしましたが、現在では、ともに米国の同盟国であり、民主主義的価値観を共有するアジア太平洋地域の重要な友好国同士となり、米国を除いては唯一の「防衛・外務閣僚協議」いわゆる「2+2」を定期的に開催するまでに至りました。
 さて、オーストラリアにおける防衛省・自衛隊の代表である防衛駐在官の仕事は多岐にわたりますが、私は、両国の友好関係をさらに発展させるため、防衛交流は極めて重要であると認識し、防衛大臣、各幕僚長などの相互訪問や、部隊間の交流、共同訓練あるいは自衛官の研修など幅広い調整業務、双方の安全保障環境に関する意見交換をオーストラリア側の数多い担当者達と積極的に行っています。
 また、オーストラリアに派遣されている約25か国約45名の各国の軍代表である駐在武官と、それぞれの国の独立記念日や軍関係記念日行事への参加や、定期的に意見交換を行うなど、相互理解を深めるよう努めています。各国の駐在武官は、文化などの違いから、意見や知識に大きな違いがありますが、より安定した国際的な安全保障環境構築の重要性に関する認識を共有し、言葉の壁が気にならないほど良い関係を築いています。
 わが国とオーストラリアの関係は今後益々深まり、それにともない防衛交流も活発となると考えます。そしてその関係がアジア太平洋地域の平和と安全の礎となると信じています。私は微力ながらその礎を少しでも強固なものとできるよう、家族の協力も得ながら努力したいと考えています。
 
自衛隊記念日レセプションでイタリア国防武官夫妻と永井1佐夫妻(右側)
 
兼轄するニュージーランドの統合司令部前で防衛当局間協議参加者と永井1佐(左端)

 

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