第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

(解説)新就役艦艇「ひゅうが」と「そうりゅう」

16DDH「ひゅうが」
 「はるな」型および「しらね」型ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は、就役から四半世紀を超え、老朽化が激しいため、順次その更新を図っている。
 本年3月18日に就役したDDH「ひゅうが」は、護衛艦として初めて艦首から艦尾までが平坦な全通飛行甲板を採用したことにより、ヘリコプターを同時に3機運用可能となるなど、航空機運用能力が向上している。排水量は1万3,950トンと従来のDDHより大型化し、滞洋性が向上していることから、活動海域や行動期間の増大へも対応可能である。また、「ひゅうが」は、その高度な指揮・通信・情報(C4I:Command, Control, Communication, Computer and Intelligence)機能を活用し、統合作戦における司令部機能を担うことができるほか、手術室などの医療設備も充実するなど、海上交通の安全確保のための作戦などのわが国の防衛のための作戦のみならず、新たな脅威や多様な事態、国際平和協力活動においても中枢艦としての活躍が期待されている。
 「ひゅうが」には、護衛艦として初めて女性区画が設けられ、就役と同時に幹部を含む約20名の海上自衛隊初の女性の護衛艦乗組員が誕生した。「ひゅうが」とともにこれらの女性乗組員も活躍することとなり、また、今後の女性区画を装備した護衛艦の増加にともない、女性海上自衛官の活躍の場もさらに増加していくこととなる。
 
16DDH「ひゅうが」

16SS「そうりゅう」
 60(昭和35)年、戦後初の国産潜水艦が就役して以来、海上自衛隊は計画的に潜水艦の整備を継続し、現在では16隻の国産潜水艦を保有するに至っている。潜水艦は戦略的価値などから、その技術を海外に依存することは困難であり、また、わが国は世界的にも高度な通常動力型潜水艦建造技術を備えていることから、わが国の潜水艦は護衛艦などと比べ国産装備の搭載比率が高い。
 本年3月30日、老朽潜水艦の代替として就役した「そうりゅう」は、わが国潜水艦として初めて、大気に依存しないスターリング・エンジンを搭載したことより、水中航続性能が大幅に向上しているほか、艦尾の舵を十字型からX字型に変更することにより運動性能が向上している。また、ソナー、潜望鏡などにも最新鋭の装備を搭載するとともに、音波吸収材を船体全面に取り付けることにより、捜索・攻撃能力、静粛性など全般的な性能の向上が図られている。
 このように、わが国の技術の粋を結集して建造された「そうりゅう」は、その向上した能力を活用して、平素における警戒監視から有事における作戦まで、幅広い任務で活躍することとなる。
 
16SS「そうりゅう」

 

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