第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

(VOICE)防衛の最前線(対馬)で活躍する隊員の声

第19警戒隊 3等空曹 池田 大輔(いけだ だいすけ)

 皆さんの中には、韓国に行かれたことのある方は多いと思いますが、その韓国に一番近い日本の島、対馬に来られたことはあるでしょうか。
 対馬は風光明媚な土地であるとともに、歴史的にも元寇など数々の侵攻を受けてきた島であり、現在、陸上自衛隊の対馬駐屯地、海上自衛隊の対馬防備隊、そして航空自衛隊の海栗島(うにじま)分屯基地が所在して、この地域を守っています。私が勤務する海栗島分屯基地は、対馬の最北端に位置する、言わば離島の離島であり、韓国まで約50kmとまさに国境の最前線にあります。天候が良ければ、釜山の街並みが肉眼で確認できるくらいです。また、離島という特性上、毎日船で通勤するという他の基地にはない特徴を持っています。
 
警戒監視業務を行う池田3曹

 現在私は、第19警戒隊監視小隊に所属しています。監視小隊は、わが国に接近する航空機などをレーダーにより監視する部署であり、この地域の防空の目として、24時間365日、不断の監視業務にあたっています。私は、この監視小隊で、日々、警戒監視業務に従事するとともに、無線を使って、日本の航空機のパイロットに対する支援なども行っています。
 ところで、私が何故、海栗島分屯基地で勤務するようになったかについてですが、以前から歴史のある対馬での勤務に興味と関心があり、また、厳しい環境に身を置くことで何かしら得るものがあり、自分にプラスになるだろうと考えたからです。さらに、前の勤務地で指導を受けた、尊敬する諸先輩が勤務しているということも自分の中で大きかったと思います。
 自ら希望した勤務ではありますが、普通の人なら寝ているような深夜にも勤務することが頻繁にあるため、体調管理に気を使いながら緊張感を持続させておくことが、正直言って辛い時期もありました。しかし、勤務のオン・オフにメリハリを付けた生活で、心身をリフレッシュさせています。
 今の勤務の中で、とても印象に残っていることがあります。それは、対馬近傍に国籍不明機が出現した時です。この時の、オペレーション・ルームで勤務していた全員が一体となって、対象機の情報や位置を正確、迅速に探知して防空指令所に通報するなど、緊迫した雰囲気の中で対応にあたったことは今でも忘れられません。まさに、防衛の最前線で勤務していると実感した時でした。この経験を忘れることなく、これからも監視小隊の一員として、職務を全うできるよう研鑽(けんさん)するとともに、自分がこれまで得た知識や技能を後輩に伝え、「防空の目」として頑張っていきたいと思います。
 
対馬の地理的位置
 
対馬本島から見た海栗島(うにじま)分屯基地(対岸に見えるのは韓国)

 

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