第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

(VOICE)宇宙飛行士候補に合格した隊員の声

2等空佐(当時)(現 宇宙航空研究開発機構 宇宙飛行士候補)油井 亀美也(ゆい きみや)

 私は、航空自衛隊のF-15のパイロットであり、テストパイロットでもあります。今年の2月25日に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補に選ばれました。ここでは、私が宇宙飛行士を目指した経緯などを簡単に紹介したいと思います。
 私は長野県の星がとてもきれいな村で生まれ育ち、小学生の頃から、宇宙飛行士になりたいと考えていました。しかし、大学進学に際し、両親への経済的負担を軽減するため、防衛大学校へ進学しました。防衛大学校入校後は、宇宙への夢を空への夢に置き換えて、パイロットを目指すことにしました。防衛大学校を卒業後、パイロットになるための訓練を米国で受けました。私の英語能力の基礎は、この米国での訓練で培われたものです。この米国での訓練中に、偶然「ライトスタッフ」という映画に出会いました。その映画では、米軍の優秀な戦闘機操縦者がテストパイロットになり、テストパイロットから宇宙飛行士への道を歩んでいました。日本では、そのような道がないことは承知していましたが、もしかしたら、日本でも、今後宇宙飛行士を選ぶ際には、テストパイロットから選抜する可能性があるのではないか?と考え、テストパイロットコースに志願しました。テストパイロットとしての勤務は、新しい装備品の試験など大変なものばかりでしたが、充実した日々を過ごすことができました。
 今回、JAXAが宇宙飛行士を公募するという話を耳にした時は、防衛省でデスクワークをしている時期でした。宇宙飛行士を目指すことは、職場に迷惑がかかるかもしれないと思い、応募するかどうか悩みましたが、夢に向かってチャレンジする人生最後の機会であると考え、家族の後押しも受けて応募を決心しました。英語・数学・物理・一般教養などの試験勉強は大変でしたが、受験を通じて、夢を追いかける多くの仲間と出会えることができ、本当に良い経験ができました。
 航空自衛隊での生活は、任務・訓練ともに道は平坦ではありませんでしたが、目の前のハードルを越えるたびに、少しずつ人間的に成長することができたと思います。これまで、私を育ててくれた航空自衛隊には、本当に感謝しています。このコラムを皆さんが読んでいる頃には、私はJAXAに勤務し、宇宙飛行士になるための厳しい訓練を受けていると思いますが、これまで航空自衛隊で経験してきた厳しい訓練・任務を思い出しながら、国民の皆様の期待を裏切らないように頑張りたいと思います。
 今後、宇宙飛行士を目指す皆さん!夢やロマンを心の片隅に、その時々で果たすべき役割を全力で果たせば、きっと道が開けてくると思いますので、一緒に頑張りましょう。
 
最後の飛行訓練を終えた油井2佐
 
退官にあたり同僚の見送りを受ける油井2佐

 

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