第IV部 防衛省改革 

2 平成22年度の組織改革の基本的考え方

 防衛省では、昨年12月、以下に述べる「22年度における防衛省改革の基本的考え方」を作成し、これを公表するとともに、防衛省改革会議に報告したところである。現在、この基本的考え方に基づき、省内の検討作業を推進しているところであり、今後、抜本的な組織改革について、平成22年度概算要求を行い、関係省庁との調整および国会での審議を経て、実現を図ることとしている。

(1)組織改革の目的
 抜本的な組織改革については、不祥事の再発を防止するため、報告書で提言された改革の三原則をより確実にかつ効果的に実行するとともに、今日の自衛隊を取り巻く安全保障環境の変化や自衛隊に求められる役割の重要性に鑑み、文民統制を確保しつつ、人材を有効に活用して自衛隊を積極的・効率的に機能させることができるようにするために行うものである。
 こうした目的のもと、文官と自衛官との一体感の醸成と協働体制の確立を図りつつ、防衛政策局の機能強化、統合幕僚監部の機能強化、防衛力整備部門(整備部門)の一元化、管理部門および人事、教育・訓練部門における施策を行う。

(2)文官と自衛官との協働体制の確立
 文官と自衛官は、それぞれ専門的知識や経験を持っており、内部部局、統合幕僚監部、各幕僚監部などにおいて、両者が混在して、あらゆる局面で協働することが、防衛省・自衛隊の全体最適のためには必要である。
 このため、現在の制度では困難な自衛官の内部部局における定員化を制度化するとともに、その専門性に応じて文官と自衛官を適切に配置し、真に文官と自衛官が協働できる体制を構築する。

(3)防衛政策局の機能強化
ア 新たな防衛政策局構築の基本的方向性
(ア) 防衛政策の要としての機能強化
 わが国の安全保障を確保するため防衛省・自衛隊の役割は益々増大する傾向にあるが、安全保障分野において内閣総理大臣および防衛大臣を適切に補佐し、文民統制をさらに徹底し、より実効的な政策を行うためには、官邸の司令塔機能の強化と合わせ、わが国の防衛政策の要となるべき防衛政策局の機能を強化することが必要である。

(イ)整合のとれた防衛政策遂行体制の構築
 平成22年度の組織改革において、運用企画局が廃止され統合幕僚監部の機能が強化されるとともに、整備部門が新たに創設されるなど、防衛省の組織が抜本的に改編されることとなるが、防衛政策局においては、各幕僚監部や新たな整備部門などと緊密に連携するための機能を強化し、防衛省全体として整合のとれた防衛政策を遂行できるような体制を構築する。

イ 組織改革の具体的な方向性
(ア)中長期的な観点からの防衛政策の企画・立案・発信機能の強化
 報告書においては、官邸の司令塔機能の強化を図るため、官邸がわが国としての安全保障戦略を策定することが提言されていることから、防衛省としては、例えば、「防衛戦略(仮称)」を策定するなど、官邸による戦略の策定に積極的に寄与し、中長期的かつ総合的な観点から防衛政策を企画・立案し、発信する機能を強化する。

(イ)国際的活動を含む国際・地域分野での政策の企画・立案機能の強化
 わが国の安全保障をより確固たるものとするため、防衛省・自衛隊による国際的活動が一層求められており、また、防衛省として、国外における地域毎の多様な安全保障上の課題に適切に対応する必要がある。
 中長期的かつ総合的な防衛政策の企画・立案・発信機能とともに、上記のような役割に資するよう、各種情報の収集・分析能力を強化するとともに、情報部門、運用部門と連携し、国際的活動を含む国際・地域分野での政策の企画・立案機能を向上し、あわせて防衛交流、多国間安保対話、軍備管理・軍縮などを戦略的に行う体制を強化することが必要である。

(ウ)防衛政策局における自衛官の配置
 上記のような防衛政策局の機能強化を図るため、次長クラス以下に自衛官を組み入れることとし、防衛政策の企画・立案の際、自衛官の知見や経験を直接反映できる体制を構築する。

(4)統合幕僚監部の機能強化
ア 新たな統合幕僚監部構築の基本的方向性
 自衛隊を抑制的に管理し、防衛力整備を重視する時代から、大規模災害、不審船など各種事態への対処、国際平和協力活動の実施など多様な役割を果たす自衛隊をより的確に運用する時代へと変化し、わが国を取り巻く安全保障環境の変化や危機管理意識の高まりなどもある今日、各種事態に迅速かつ実効的に対応できるよう、運用企画局を廃止し、自衛隊の運用を一元的に担う新たな統合幕僚監部を構築する。
 なお、その際、自衛隊の統合運用の実効性をより高めるため、統合幕僚長と陸上・海上・航空幕僚長との関係について検討し、適切な措置を講ずる。

イ 組織改革の具体的な方向性
(ア)運用企画局の廃止
 運用企画局と統合幕僚監部の実態としての業務の重複に起因する責任の不明確な部分を解消するとともに、一つの組織のもとで合理的かつ一体的に業務を行えるよう、運用企画局を廃止し、基本的に、その機能を統合幕僚監部に担わせることとする。
 その結果、運用企画局が所掌している「自衛隊の行動の基本に関すること」は、内部部局の所掌事務として維持しないこととする。
 新たな統合幕僚監部は、自衛隊の運用にかかる制度の企画・立案や他府省との連絡調整などの機能を遂行することとなるが、その具体的な業務の範囲については、新たな統合幕僚監部の役割や、統合幕僚監部と「防衛及び警備の基本に関すること」などを所掌する防衛政策局との関係を考慮しつつ決定する。
 なお、新たな統合幕僚監部の業務に関する具体的な国会対応のあり方については、今後、検討し、結論を得る。

(イ)統合幕僚監部における文官の配置
 自衛隊の運用については、国内外の政治情勢などを考慮しつつこれを行っていくことが必要であることや、統合幕僚監部の新たな役割として、上記の自衛隊の運用にかかる制度の企画・立案機能、他府省などとの連絡調整機能などを付加することにともない、新たな統合幕僚監部の副長クラス以下に文官を組み入れた体制を構築する。

(ウ)その他
 現在、運用企画局が所掌する「部隊訓練の基本に関すること」については、内部部局が行うことが適切な業務については内部部局が所掌するとともに、「防衛省の情報システムの整備・管理に関すること」、「指揮通信の基本に関すること」、「電波監理の基本に関すること」などとあわせ、内部部局と統合幕僚監部の所掌について、今後整理する。

(5)防衛力整備部門の一元化
ア 新たな整備部門構築の基本的方向性
 防衛力整備の全体最適化を図るためには、各自衛隊の組織・定員・編成・装備・配置について全体構想・計画を策定するとともに、個々の施策は常に全体の目標に適合するよう計画・措置され、かつ優先度を踏まえた予算の集中運用や各種事業の統合・共通化による効率性の追求なども行えるよう各年度の予算が全体最適化の考えのもとに編成されることにより、防衛省として統一的で効果的・効率的な防衛力整備事業などを行うことが必要である。
 このため、内部部局および各幕僚監部の整備部門を統合して、整備事業などを一元的に取り扱う新たな整備部門を創設する。

イ 組織改革の具体的な方向性
(ア)新たな整備部門の業務
 新たな整備部門は、防衛力整備事業などを一元的に取り扱うこととし、このため、防衛省として統一的な整備構想の策定、整備計画の策定、年度予算の編成・執行などの総括、内閣官房などとの調整を行う。
 また、わが国の防衛力の主要な構成要素である各自衛隊の主要な部隊、主要装備、共通装備、システム関連装備、研究開発、自衛官定数、事務官などの定員などについては、それらの整備構想・計画の策定などを行うとともに、年度予算要求などの予算編成作業を行う。
(イ)一元化の例外
 各自衛隊の隊務と密接に連携する事項については、各自衛隊の隊務を円滑に行えるよう、一元化の例外として、各幕僚監部で取り扱うこととするが、最終的に、新たな整備部門は、これらの業務をとりまとめ、防衛力整備の全体最適化を行う。

(ウ)新たな整備部門の組織の在り方
 新たな整備部門については、内部部局の局とすることを基本として、今後、具体的な業務要領、具体的な組織構造などについて検討・検証を行うこととする。

(6)管理部門および人事、教育・訓練部門における施策
ア 管理部門
 管理部門については、内部部局と各機関の重複を避け、防衛省として統合的に業務を遂行すべき分野であることから、極力統合化を図り、業務の効率化と人材の有効活用を行う。
 具体的な検討においては、類似的業務を行っているもの、同一業務を分担して行っているものなどに着目して、実際の業務の重複性の観点から整理・集約し、各幕僚監部による隊務の運営に支障を来さないよう留意しつつ、必要に応じて組織を見直すとともに、業務要領を改善・効率化する。

イ 人事、教育・訓練部門
 自衛官の人事、教育・訓練部門については、各幕僚監部が主たる責任を負うべき分野であるとの観点から、各幕僚監部が行う具体的事項を整理するとともに、制度や政策面から統一的に防衛大臣を補佐するとの観点から、内部部局が行う具体的事項を整理し、内部部局と各幕僚監部が行う業務の一層の適正化を図るものとする。
 具体的検討においては、内部部局と各幕僚監部の業務の重複を避けることに留意しつつ、内部部局と各幕僚監部との間などの業務要領を精査し、必要に応じて規則改正などを行う。

(7)その他
ア 専門部会の設置
 上記のような平成22年度における抜本的な組織改革の具体的なあり方を検討するため、防衛省改革本部の下に専門部会を設置し、具体的な編成案や新たな業務要領に関する検討などを行い、防衛省改革本部として、平成22年度概算要求のための作業を精力的に行うこととする。

イ 業務に関する検証
 抜本的な組織改革については、真に機能する改革とするため、不必要な混乱を招かないよう、新たな組織へ円滑な移行を行うことが必要であることから、今後、業務に関する検証を行い、平成22年度における組織改革を実現することとする。

 

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