第III部 わが国の防衛のための諸施策 

3 防衛省・自衛隊が主催または参加している多国間安全保障対話

 防衛省は、各国防衛当局者との情報・意見交換を通じた信頼・協力関係の増進を図るため、わが国が主体性をもって積極的に安全保障対話を進めることが、アジア太平洋地域の安定化に重要であると考えている。このような認識の下、防衛省・自衛隊では各種セミナーを主催するなど、多国間の安全保障対話を主体的に行うとともに、諸外国やその他の機関が主催する対話にも積極的に参加している。

参照 資料5354

 本年3月には、防衛省の主催により、アジア太平洋地域における共通の安全保障課題に関する防衛当局高級事務レベル会合が、東京で初めて開催された。この会合は、ASEAN各国の防衛当局の高級事務レベルをわが国に招き、地域の安全保障上の課題について率直な対話を行い、緊密な人的関係を構築することを目的としたものであり、わが国のほか、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムが参加した。今回の会合においては、増田防衛事務次官が議長を務め、人道支援・災害救援、海上の安全保障、平和維持・平和構築など地域の共通の安全保障上の課題について率直かつ建設的な意見交換を行った。また、同会合の後、増田防衛事務次官は、カンボジアの国防省長官、インドネシアおよびラオスの国防次官と個別に会談を行った。
 さらに、翌日、東南アジア諸国およびわが国の有識者ならびに防衛当局者を招き、一般公開の「共通安全保障課題に関する東京セミナー」を初めて開催し、1)地域において共有し得る安全保障上の課題、2)共通の課題に対する地域協力促進の方策、3)地域協力における防衛当局の役割と対応、について議論を行った。
 96(同8)年から毎年防衛省が主催しているアジア
太平洋地域防衛当局者フォーラム(東京ディフェンス・フォーラム)は、各国の防衛政策への相互理解を深め、その透明性を高めて地域の安定化に寄与することを目的とし、各国の防衛政策や、防衛面に焦点をあてた信頼醸成措置への取組について意見交換を行っている。
 昨年10月の第13回フォーラムには、25か国およびEUのほか、国連人道問題調整部(OCHA:United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs)、ASEAN事務局および赤十字国際委員会(ICRC:International Committee of the Red cross)の参加を得て、「災害救援における国際協力のための取組」および「各国の防衛政策」について意見交換を行った。また、昨年2月には、第7回分科会を開催し、25か国およびEUのほか、OCHA、ASEAN事務局およびICRCの参加を得て、平和構築に関する能力向上や国際協力の促進のための留意事項を内容とする「平和構築に関するベスト・プラクティス参照ペーパー」2の作成について検討するとともに、「地域間協力と周辺地域への影響」について議論を行った。
 
第13回東京ディフェンス・フォーラムにおいてスピーチを行う北村防衛副大臣

 IISSアジア安全保障会議は、民間機関主催の国際会議であるが、アジア太平洋地域の国防大臣などが多数参加するほぼ唯一の会議であり、毎年シンガポールで開催されている。本年5月の第8回会議においては、わが国からは浜田防衛大臣が参加し、「主要国とアジアの安全保障:協力か対立か」というテーマで、同地域における重要な安全保障上の課題についてスピーチを行った。会議の際、浜田防衛大臣はベトナム、オーストラリア、米国、モンゴル、シンガポールの国防大臣と個別に会談したほか、初の日米韓防衛相会談を行い、また、シンガポールのリー・シェンロン首相およびリー・クアンユー内閣顧問を表敬した。
 ミュンヘン安全保障会議は、62(昭和37)年に発足した欧米における安全保障に関する最も権威のある国際会議の1つである。本年2月の第45回会議には、浜田防衛大臣がわが国の防衛大臣として初めて参加し、「地球規模の課題とグローバル・ガバナンスの危機」についてパネリストとして発言し、議論を行った。会議の際、浜田防衛大臣は、シンガポール、イギリス、ドイツの国防大臣と個別に会談したほか、国際政治学者のジョセフ・ナイ教授とも会談を行った。
 また、07(同19)年9月、米太平洋軍司令部との共催で、28か国および2機関から91名の参加を得て、アジア・太平洋地域後方補給セミナー(PASOLS:Pacific Area Senior Officer Logistics Seminar)を、わが国で開催するとともに、本年8月には、米陸軍および米太平洋陸軍との共催で、太平洋地域陸軍参謀総長等会議(PACC:Pacific Armies Chiefs Conference)および太平洋地域陸軍管理セミナー(PAMS:Pacific Armies Management Seminar)のわが国での開催を予定している。


 
2)国際平和協力活動における各国の経験、教訓を共有するための文書


 

前の項目に戻る     次の項目に進む