第III部 わが国の防衛のための諸施策 

5 日印防衛交流

 インドは、わが国との関係においては、伝統的な友好関係があり、民主主義、自由市場経済という点でも、わが国と認識を共有している。また、広大な国土と10億人を超える人口を持ち、わが国と中東地域を結ぶ海上交通路の安全や、わが国がインド洋などで行っている活動にとっても重要な地域である南アジア地域の安全保障において大きな影響力を持っている。このため、インドと防衛政策や地域情勢などに関する意見交換を行い、相互理解を深めるとともに、信頼・協力関係を増進させることは極めて有意義である。
 06(同18)年12月、シン印首相が訪日し、安倍総理(当時)との間で日印関係を「戦略的グローバル・パートナーシップ」9に引き上げ、その構築に向けた政治・安全保障などの分野における具体的取組を示す共同声明に署名した。さらに、07(同19)年8月、訪印した安倍総理(当時)は、シン印首相との間で「新次元における日印戦略的グローバル・パートナーシップのロードマップに関する共同声明」に署名し、安全保障分野における将来の二国間協力の方向性の検討や防衛交流の強化などについて一致した。昨年10月にはシン印首相が訪日し、麻生総理と会談を行い、両国間の安全保障協力を促進するための包括的な枠組の構築や、具体策を盛り込んだ行動計画の作成などを柱とする「日印戦略的グローバル・パートナーシップの前進に関する共同声明」10および「日印安全保障協力に関する共同宣言」(共同宣言)11に署名した。共同宣言においては、防衛大臣間の会合、防衛政策対話を含む次官間の会合、局長級による防衛当局間協議、二国間および多国間の訓練を含む軍種間の交流などの枠組により、防衛当局間の協力を進めていくことが明記された。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 07(同19)年8月、小池防衛大臣(当時)および木村防衛副大臣(当時)が相次いで訪印し、それぞれアントニー国防大臣およびパラム・ラジュ国防担当閣外大臣などと会談を行った。防衛相会談では、テロとの闘い、地域情勢、両国の関係などについて意見交換を行い、防衛交流をさらに発展させていくことで一致した。
 同年4月には、ダット印国防次官(当時)が訪日し、守屋事務次官(当時)との間で、これまでの次官級協議を日印防衛政策対話として拡充し、今後の日印防衛交流の深化や地域情勢について意見交換を行った。
 また、同年1月にはチャギ空軍参謀長(当時)が、同年4月にはシン陸軍参謀長(当時)が、昨年8月にはメタ海軍参謀長が訪日し、それぞれ吉田空幕長(当時)、折木陸幕長(当時)および赤星海幕長と意見交換を行った。

(2)防衛当局者間の定期協議など
 本年2月に、第5回防衛当局間協議を行い、両国の防衛政策や日印防衛交流などについて意見交換を行った。
昨年11月には海自とインド海軍との間で初のスタッフ・トークスを行い、海自とインド海軍間の協力のあり方などについて意見交換を行った。
 また、平成20年度から、防衛省・自衛隊からインド国防大学への留学生の派遣を開始するなど、留学生の派遣・受入れのほか、防衛研究者の相互訪問など、研究交流を活発に行っている。

(3)部隊間の交流など
 海自は、インド海軍との間で、これまで頻繁に相互訪問を行っており、この際、練習艦隊とインド海軍部隊が親善訓練を行うなど、部隊間の交流を活発に行っている。
07(同19)年4月には、インド海軍艦艇3隻が、15回目となる訪日を行い、これに合わせて、初めてとなる日米印3か国の訓練を行った。さらに、同年9月には、ベンガル湾周辺海域での多国間海上共同訓練(マラバール07-2)12に海自が初めて参加し、本年4月には沖縄周辺海域での多国間海上共同訓練(マラバール09)13に参加した。
 
日印親善訓練で印艦艇と併走する「すずなみ」(右側)


 
9)<http://www.mod.go.jp/j/defense/exchange/pdf/india01.pdf>参照

 
10)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/visit/0810_gpks.html>参照

 
11)<http://www.mod.go.jp/j/defense/exchange/pdf/india02.pdf>参照

 
12)わが国のほか、米国、インド、オーストラリア、シンガポールが参加

 
13)わが国のほか、米国およびインドが参加


 

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