第III部 わが国の防衛のための諸施策 

4 日豪防衛交流

 オーストラリアは、わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナーであり、同じ米国の同盟国として防衛分野において多くの関心を共有している。このような観点から、オーストラリアとの間で防衛交流を進めて協力の基盤をつくり、より効果的に協調、協力を図ることは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって重要である。また、日米豪3か国間や多国間の枠組みにおける日豪の協力についても、重要となっている。
 特に近年においては、両国の防衛交流が深化、拡大してきており、イラクにおける協力、災害の際の人道支援など、安全保障分野における二国間協力5が、着実に進展している。
 このような状況を踏まえ、二国間の安全保障協力を包括的な枠組の下で一層強化するため、07(同19)年3月、安倍総理(当時)と訪日したハワード豪首相(当時)の間で、安全保障協力に関する日豪共同宣言6を発表した。
 本共同宣言に基づき、07(同19)年6月に久間防衛大臣(当時)とネルソン豪国防大臣(当時)との間で防衛相会談が、さらに、初めての日豪防衛・外務閣僚協議(「2+2」)が相次いで行われた。また、同年9月には、訪豪した安倍総理(当時)がハワード豪首相(当時)と行った日豪首脳会談の際、安全保障協力に関する日豪共同宣言を実施するための行動計画が策定され、防衛分野に関しては、日豪防衛交流覚書の改定作業の方向性などについて記述された。
 昨年12月には、浜田防衛大臣が訪日したフィッツギブン豪国防大臣(当時)と防衛相会談を行い、1)国際平和協力活動での協力の推進、2)戦略対話の実施や訓練の拡充など平素からの協力・連携の強化、3)日米豪3か国間・多国間協力の強化を柱とする、改定された日豪防衛交流覚書(日豪防衛協力覚書)7に両大臣が署名した。引き続き行われた第2回日豪「2+2」においても、日豪間の安全保障協力を促進することで一致し、協議終了後、日豪防衛交流覚書の改定を歓迎し、次回日豪「2+2」を豪州で09(同21)年に開催することなどを盛り込んだ共同ステートメント8が発出された。
 これらを踏まえ、現在、安全保障協力の促進に向けて、日豪間で協議を進めている。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 昨年6月、石破防衛大臣(当時)が来日中のラッド豪首相と今後の日豪間の協力について意見交換を行った。また、同年12月には、浜田防衛大臣がフィッツギブン豪国防大臣(当時)と会談し、日豪防衛協力覚書に署名した。さらに、本年5月、第8回IISSアジア安全保障会議において、浜田防衛大臣がフィッツギブン豪国防大臣(当時)と会談し、北朝鮮の核実験について両国が一体となって対応していくことやロジスティックス協力に関する検討の加速、共同訓練の拡充、日米豪3か国の協力の強化で一致したほか、豪国防白書について意見交換を行った。
 昨年4月には、シェルダーズ豪海軍本部長(当時)が訪日し赤星海幕長と、同年5月には田母神空幕長(当時)が訪豪しシェファード豪空軍本部長(当時)とそれぞれ意見交換を行った。
 
赤星海上幕僚長とシェルダーズ豪海軍本部長(当時)

(2)防衛当局者間の定期協議など
 96(同8)年以降、ほぼ毎年、局長・審議官級の防衛当局間協議とともに、外務当局を含めた安全保障対話を行っている。また、統幕、陸・海・空自とオーストラリア軍との間においても継続的な協議を行うとともに、留学生の派遣・受入れや研究交流を行っている。
 特に、近年は、二国間協力の進展にあわせて、各協議を頻繁に行っており、防衛当局者間協議についても、昨年9月に行った。

(3)部隊間の交流など
 陸自は、東ティモールや、イラクなどの国際平和協力活動において、現地に派遣されていたオーストラリア陸軍部隊との交流を行った。
 海自とオーストラリア海・空軍は、艦艇や航空機の相互訪問を行っている。また、昨年7月から8月にかけて行われたオーストラリア海軍主催多国間共同海上訓練(カカドゥ08)に初めて部隊が参加し、護衛艦1隻を派遣するとともに、昨年9月、哨戒機(P-3C)を派遣した。
 空自は、07(同19)年10月、多用途支援機(U-4)を初めてオーストラリアに派遣した。

(4)日米豪3か国の協力
 07(同19)年6月、久間防衛大臣(当時)は、第6回IISSアジア安全保障会議への出席の機会をとらえ、ゲイツ米国防長官、ネルソン豪国防大臣(当時)と初となる日米豪防衛相会談を行った。また、昨年4月には、07(同19)年4月に引き続き日米豪3か国の局長級会合を行い、3か国間の防衛協力などについて協議を行った。
 さらに、07(同19)年5月および昨年2月には、日米豪3か国の防衛当局者が参加して太平洋長距離航空輸送セミナー(PGAMS:Pacific Global Air Mobility Seminar)が開催され、今後の日米豪3か国の航空輸送分野における協力について意見交換を行い、昨年2月のセミナーにおいては、陸自のCH-47の米空軍C-17への搭載について実機を用いた検証を行った。また、07(同19)年10月には、海自、米海軍およびオーストラリア空軍との間で、海自のP-3Cなどによる日米豪3か国の訓練を初めて行った。


 
5)具体的には、カンボジアPKO以来イラク・サマーワでの協力、インド洋津波における災害の際の人道支援などがあげられる。

 
6)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2007/03/13.pdf>参照

 
7)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2008/12/18g.html>参照

 
8)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2008/12/18.html>参照


 

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