第III部 わが国の防衛のための諸施策 

3 日中防衛交流

 中国は、近年の目覚しい経済発展や軍事力の近代化など、各国がその動向に注目する存在となっている。防衛分野での相互理解を深め信頼関係を増進させることは、両国の安全保障のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にも有益である。
 07(同19)年12月には、福田総理(当時)が中国を公式訪問し、「戦略的互恵関係」3の具体化として「交流・相互信頼の促進」を3つの柱の1つとして位置づけ、安全保障分野における交流強化、具体的には海自艦艇の派遣や自衛隊と人民解放軍の青年幹部の相互訪問などについて意見が一致した。
 また、昨年5月の胡錦濤国家主席訪日の際にも、防衛大臣などのハイレベル交流の強化、海自艦艇の訪中、防衛当局間の連絡メカニズムの早期設置などが合意されるとともに、「「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明」において、安全保障分野におけるハイレベル相互訪問を強化し、さまざまな対話および交流を促進し、相互理解と信頼を一層強化していく旨が記述された。
 「戦略的互恵関係」の重要な要素である防衛交流を推進する際には、大臣レベルの交流が重要な役割を果たしている。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 07(同19)年8月には、曹剛川中国国防部長(当時)が訪日し、高村防衛大臣(当時)と国際・地域情勢、日中両国の防衛政策および日中防衛交流について協議を行い、防衛大臣・統幕長などのハイレベル交流の推進、艦艇の相互訪問、各軍種・各分野での交流拡大など、日中防衛交流をさらに進展させていくことが重要との認識で一致し、日中の防衛当局間では初の共同文書となる「日中防衛当局共同プレス発表」を発出した。本年3月には、浜田防衛大臣が訪中し、梁光烈中国国防部長と日中両国の防衛政策、日中防衛交流、地域情勢について協議を行い、各レベル、各分野での交流の推進およびPKO、災害救援、海賊対策で対話と協力を進めることで一致し、今後の主要な交流についての10項目の共通認識を含む「共同プレス発表」4を発出した。また、昨年2月には、齋藤統幕長(当時)が訪中し、陳炳徳(ちん・へいとく)総参謀長ほかと会談を行った。さらに、同年3月には、増田事務次官が訪中し、馬暁天(ば・ぎょうてん)副総参謀長と会談を行い、中国の軍事費増加などについて申入れを行った。また、梁光烈(りょう・こうれつ)国防部長を表敬し、今後ともハイレベルの往来を継続することで一致した。同年9月には、許其亮(きょ・きりょう)空軍司令員が訪日し、田母神空幕長(当時)と率直な意見交換を行い、交流をさらに強化していくことで認識が一致した。また、同年10月には、呉勝利(ご・しょうり)海軍司令員が訪日し、赤星海幕長と会談を行い、海自と中国海軍間の防衛交流の重要性について認識が一致した。本年2月には、葛振峰(かつ・しんほう)副総参謀長が訪日し、折木陸幕長(当時)と率直な意見交換を行い、交流を積極的に推進することで一致した。
 
浜田防衛大臣と呉中国全人代常務委員長

(2)防衛当局者間の定期協議など
 本年3月、両国の外交・防衛当局間による日中安全保障対話が行われた。また、防衛研究所一般課程への留学生受入れ、中国国防大学の課程への留学生派遣、防衛研究所を中心とした研究交流や教育分野の交流、防衛研究所や統合幕僚学校、中国国防大学の課程学生による相互訪問などが継続的に行われている。

(3)部隊間の交流など
 07(同19)年8月の高村防衛大臣(当時)と曹剛川国防部長(当時)との会談において日中国交正常化35周年を記念し、艦艇相互訪問を行うことについて意見が一致し、同年11月から12月にかけ、初めて中国海軍南海艦隊所属駆逐艦「深せん(土偏に川)」が東京に寄港した。これを受け、日中の首脳の合意に基づき、昨年6月、護衛艦「さざなみ」が海自艦艇として初めて中国広東省・湛江(たんこう)を訪問した。その際、四川省で発生した大地震の被災者へのお見舞いとして、毛布、非常食、衛生用品などを輸送した。また、中国側からの招請に基づき、07(同19)年9月の中国主催の軍事演習「勇士−2007」にオブザーバーとして陸上自衛官を初めて派遣し、中国人民解放軍空軍幹部代表団が訪日するなど、交流を推進している。
 日中首脳間の合意に基づき、昨年9月に中国人民解放軍の尉官級青年将校が初訪日し、本年3月に自衛隊の尉官級若手幹部が初訪中し、それぞれ表敬、部隊研修、文化研修などを行った。


 
3)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/visit/0704_gai.html>参照

 
4)<http://www.mod.go.jp/j/news/youjin/2009/03/20.pdf>参照


 

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