ロシアは、欧州、中央アジアおよびアジア太平洋地域の安全保障に大きな影響力を持ち、かつ日本の隣国であるため、日露の防衛交流を深め、信頼・協力関係を増進させることは極めて重要である。
　防衛省は、97(同9)年のクラスノヤルスクでの日露首脳会談以降、さまざまな分野で日露関係が進展する中、99(同11)年に作成された日露防衛交流の覚書に沿って各レベルで着実にロシアとの防衛交流を進めている。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
　96(同8)年に、旧ソ連時代を含めて初めて臼井防衛庁長官(当時)が訪露して以来、日露間のハイレベルの交流が進展している。
　06(同18)年の1月には、額賀防衛庁長官(当時)が訪露し、99(同11)年に作成された日露防衛交流に関する覚書の改定が行われた。その際、イワノフ国防大臣(当時)は、「日露行動計画が防衛当局間の協力を深めていく良い基盤となっており、海の交流が最も進んでいるが、陸や空でもさらに交流を発展させたい。」と述べ、陸自やロシア地上軍が行っている演習などへの相互オブザーバーの派遣、空自とロシア空軍との代表団および航空機の相互訪問などについて一致した。また、昨年3月には、マスロフ地上軍総司令官(当時)が訪日し折木陸幕長(当時)と、同年4月には、齋藤統幕長(当時)が訪露しバルエフスキー参謀総長(当時)と、それぞれ意見交換を行った。

(2)防衛当局者間の定期協議など
　防衛省は、局長・審議官級の防衛当局間協議を定期的に行っているほか、両国間の防衛交流の進め方全般について協議する日露共同作業グループ会合、日露海上事故防止協定に基づく年次会合などを継続的に行っている。
　また、統幕とロシア連邦軍参謀本部とのスタッフトークス(幕僚協議)をはじめ、陸自・空自とロシア地上軍・空軍との間での活発な対話や、防衛研究所とロシア国防省関係研究機関との間での、日露防衛研究・教官交流を継続的に行っている。

(3)部隊間の交流など
　陸自とロシア地上軍は、03(同15)年以来、北部方面隊とロシア極東軍管区との間で部隊指揮官が相互に訪問するなどの交流を行っており、昨年11月には極東軍管区司令官が訪日し、本年3月には北部方面総監が訪露した。また、昨年9月には、ロシア地上軍の演習に、初めて陸自からオブザーバーを派遣した。
　海自とロシア海軍は、96(同8)年の海自艦艇のウラジオストク訪問以来、毎年艦艇の相互訪問を行っており、また、98(同10)年から日露捜索・救難共同訓練を行っている。昨年9月から10月にかけて、ロシア海軍の艦艇が舞鶴に寄港した機会を利用して、第10回日露捜索・救難共同訓練を行った。
　空自とロシア空軍は、07(同19)年以来、北部航空方面隊とロシア空軍第11航空・防空司令部との間で部隊指揮官が相互に訪問するなどの交流を行っており、昨年11月には空自の北部航空方面隊司令官が初めて訪露した。
　このように、今まで交流の少なかった陸・空軍種間の部隊間交流が着実に進展しつつある。