第III部 わが国の防衛のための諸施策 

1 日韓防衛交流

 韓国は、地政学的な観点からわが国の安全保障にとって重要な国であるとともに、自由や民主主義といった、わが国と基本的な価値を共有できる友好国である。また、米国と同盟関係にあり、安全保障上の観点からわが国と同様に、米軍を駐留させている。そのため、韓国との防衛交流を積極的に進めることにより、相互理解や信頼関係を増進させ、また、協力の基盤をつくり、両国が東アジア全体の平和と安定に向けて、政策面においてより効果的に協調、協力していくことが極めて重要である。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 94(平成6)年以降、両国防衛首脳が、ほぼ毎年交互に訪問し、会談が開かれている。
 本年4月、李相憙(イ・サンヒ)韓国国防部長官が来日し、浜田防衛大臣と北朝鮮問題、日韓防衛交流などについて意見交換を行った。会談後、両大臣は初となる「日本国防衛省と大韓民国国防部との防衛交流に関する意図表明文書」に署名を行った。
 
李韓国国防部長官と浜田防衛大臣

 昨年1月には朴興烈(パク・フンニュル)韓国陸軍参謀総長(当時)が訪日し折木陸上幕僚長(当時)と、同年4月には金銀基(キム・ウンギ)韓国空軍参謀総長(当時)が訪日し田母神航空幕僚長(当時)と、同じく同年4月には金泰榮(キム・テヨン)韓国合同参謀議長が訪日し齋藤統合幕僚長(当時)とそれぞれ意見交換を行ったほか、昨年10月には赤星海上幕僚長が韓国で行われた国際観艦式および西太平洋海軍シンポジウム(WPNS:Western Pacific Naval Symposium)への出席のため訪韓した。

(2)防衛当局者間の定期協議など
 94(同6)年以降、毎年、局長・審議官級の防衛実務者対話を行っているほか、98(同10)年以降は、外務当局を含めた安全保障対話を行っている。
 昨年7月には、第16回日韓防衛実務者対話を開催し、両国の防衛政策や日韓防衛交流について意見交換を行ったほか、同年12月には、第2回日韓防衛実務者対話作業部会(課長級)を開催した。
 また、昨年11月には、第8回日韓安全保障対話を開催し、両国を取り巻く安全保障環境や安全保障政策などの意見交換を行った。
 このほか、統幕と韓国合同参謀本部、陸上・海上・航空自衛隊と韓国陸・海・空軍間でも活発な対話などを行うとともに、留学生の派遣・受入れや研究交流も盛んに行っている。

(3)部隊間の交流など
 陸自と韓国陸軍は、01(同13)年以来、西部方面隊と韓国陸軍第2軍1との間で部隊指揮官が相互に訪問するなどの交流を行っている。07(同19)年6月には、韓国陸軍第2軍司令官が訪日し、同年10月には、西部方面総監が訪韓した。
 海自と韓国海軍は、94(同6)年以来、艦艇が相互に訪問するなどの交流を行っており、昨年9月には、韓国海軍の艦艇が訪日し、同年10月には韓国で行われた国際観艦式に海上自衛隊の艦艇が参加した。また、部隊指揮官の相互訪問として、同年12月に、韓国海軍第1艦隊司令官が訪日し、本年5月には、舞鶴地方総監が訪韓した。
 空自と韓国空軍は、00(同12)年以来、航空機の相互訪問による交流を行っている。また、部隊指揮官の相互訪問として、昨年5月に韓国空軍南部戦闘司令官が訪日し、本年5月には、西部航空方面隊司令官が訪韓した。

(4)日米韓3か国の協力
 本年5月、英国の国際戦略研究所(IISS:International Institute for Strategic Studies)が主催した第8回アジア安全保障会議2の際に、浜田防衛大臣がゲイツ米国防長官、李韓国国防部長官と初となる日米韓防衛相会談を行い、北朝鮮の核実験への対応、3か国の緊密な協力の重要性について意見交換を行った。また、昨年11月に日米韓防衛実務者協議を行い、安全保障上の諸問題について意見交換を行った。
 
浜田防衛大臣、ゲイツ米国防長官と李韓国国防部長官


 
1)第2軍は、07(平成19)年11月1日に第2作戦司令部に改編された。

 
2)アジア太平洋地域の国防大臣クラスを集めて防衛問題や地域の防衛協力についての議論を行うことを目的として開催される多国間会議であり、民間研究機関である英国の国際戦略研究所の主催により始まった。2002年の第1回から毎年シンガポールで開催され、会場のホテル名からシャングリラ会合(Shangri-La Dialogue)と通称される。
http://www.mod.go.jp/j/defense/dialogue/iiss.html>参照


 

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