第III部 わが国の防衛のための諸施策 

4 国連兵力引き離し監視隊

(1)UNDOFへの派遣の経緯など
 国連兵力引き離し監視隊(UNDOF:United Nations Disengagement Observer Force)は、停戦に合意したシリアとイスラエルの間のゴラン高原に設定された兵力引き離し地域(AOS:Area of Separation)に展開し、両国間の停戦監視および兵力引き離しなどに関する合意の履行状況の監視を任務とする国連平和維持活動であり、自衛隊はこの活動の中で後方支援活動を行っている。
(図表III-3-1-10・11 参照)
 
図表III-3-1-10 ゴラン高原周辺図
 
図表III-3-1-11 UND0Fの組織

 石油の大部分を中東地域から輸入しているわが国にとって、当該地域の安定は極めて重要であり、本活動への参加は、中東和平のための国際的努力に対するわが国の人的な協力としての意義を有しているほか、国際平和協力活動にかかわる人材養成としての意義も有する。
 政府は95(同7)年12月、自衛隊の部隊などのUNDOFへの派遣を決定し、96(同8)年2月に、第1次ゴラン高原派遣輸送隊43名がカナダの輸送部隊と交代した。以来、約6か月交代で部隊を派遣してきたが、昨年2月、要員の交代だけを行い、部隊を維持する方式に変更し、ゴラン高原派遣輸送隊を新たに編成した。

(2)自衛隊の活動
 派遣輸送隊は、UNDOFの活動に必要な日常生活物資などを、イスラエル、シリア、レバノンの港湾、空港、市場などから各宿営地まで輸送しているほか、道路の補修や、標高2,800メートルを超える山岳地帯での除雪作業などの後方支援業務を行っている。さらに、06(同18)年3月からカナダ隊に代わって任務についたインド部隊などと同一宿営地に居住し、隊員の給食業務などを共同で行っている。
 空自は、派遣輸送隊に対する物資輸送のため、輸送機(C-130H)や多用途支援機(U-4)を半年に1度の割合で派遣している。
 UNDOFの司令部には、自衛官3名が幕僚として派遣され、輸送などの後方支援分野に関する企画・調整やUNDOFの活動に関する広報や予算関連の業務を行っている。司令部要員は、おおむね1年ごとに交代しており、本年5月末現在、第14次の要員が派遣されている。
 わが国からのUNDOFへの派遣期間は、当初、2年をめどとされていたが、国連からの強い要請、わが国要員の活動に対する国連や関係国からの高い評価、わが国の繁栄に大きな影響を及ぼす中東和平への人的協力の重要性などを考慮し現在も派遣を継続しており、これまでの間に、ゴラン高原派遣輸送隊として27次にわたってのべ約1,200人の隊員を派遣し、貢献を重ねてきている。
 
UNDOFにおいて夜間レッカー業務を行う陸自隊員

 

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