第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

第4節 宇宙および海洋に関する新たな取組

1 宇宙開発利用に関する取組

 昨年5月、宇宙基本法1が成立し、施行されたことを受け、わが国における宇宙開発利用は、国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり行われることがより明確となった。また、国は、国際社会の平和および安全の確保ならびにわが国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずることとされた。さらに、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に宇宙開発戦略本部が設置された。
 宇宙開発戦略本部は、宇宙基本法に基づき、宇宙を活用した安心・安全で豊かな社会の実現、宇宙を活用した安全保障の強化など6つの方向性を柱とした宇宙基本計画を作成し、本年6月2日、これを公表した。
 防衛省としては、宇宙基本法の成立という大きな環境の変化を踏まえ、政府全体としての総合的かつ計画的な宇宙開発利用の検討と連携して、新たな安全保障分野における宇宙開発利用の可能性などについて、必要な施策の検討を行っている。
 具体的には、防衛省としてわが国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、昨年8月、副大臣を長とする宇宙開発利用推進委員会を設置し、精力的な検討を行った。
 
宇宙開発戦略本部第2回会合

 本年1月15日には、同委員会において、「宇宙開発利用に関する基本方針について」(基本方針)2が決定され、防衛大臣に報告された。基本方針では、個々の装備品やシステムを有機的に連接させることにより、状況把握、情報共有、指揮・統制などの高度化を実現し、装備の集合体として最大限の能力を発揮することに防衛力の整備の重点が置かれていることを踏まえ、宇宙開発利用は、特にC4ISR3の機能を強化する有効な手段であるとしている。
 このような防衛分野での宇宙開発利用の意義を踏まえ、宇宙開発利用の推進に関する施策については、政府全体の有機的な連携のもと、一般化理論4を超えた施策を含め、本年末に見込まれる防衛計画の大綱の見直しと次期中期防衛力整備計画の策定を念頭に、具体的な事業化も視野に入れた検討を行うこととしている。
 また、情報収集・警戒監視や情報通信などの機能を持つ衛星、打上げシステム、人材・組織、技術基盤などに関する今後の検討・施策の方向性を示すとともに、これらを推進するに当たり、民生部門との協力や他機関との交流を促進していくことなどの注意点を示している。
 今後、防衛省としては、基本方針や宇宙基本計画などを踏まえ、安全保障分野における新たな宇宙開発利用を推進するため、内閣官房をはじめとする関係府省との連携を図りつつ、精力的に具体的な施策の検討を進めていくこととしている。


 
1)<http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/about2.html>参照

 
2)<http://www.mod.go.jp/j/info/uchuukaihatsu/index.html>参照

 
3)Command, Control, Communication, Computer, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance の略で、「指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、監視、偵察」の各機能の総称

 
4)その利用が一般化している衛星およびそれと同様の機能を有する衛星については、自衛隊による利用が認められるという考え方のこと


 

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