第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

第4節 ロシア

1 全般

 ロシアは、プーチン前大統領の下で90年代の危機的状況から脱却し、国際社会の多極化を志向しつつ、「強い国家」として尊重されかつ自ら擁護することができる国家として国際社会への復帰を果たすとともに、90年代を通じて失われた社会・経済発展の水準を完全に取り戻したとしている。
 これらを可能にした要因の一つに、主要輸出部門である原油などの価格高騰による経済の回復があり、軍事力の近代化に当たっても、軍備競争を避けつつ、自国の経済発展を犠牲にしないこととしている1
 昨年5月にメドベージェフ大統領が就任し、プーチン前大統領の政策を基本的に継承していると見られるが2、今後の社会発展と経済発展には、エネルギー資源部門への過度の依存体制など、各種の制約要因が存在していると考えられ、昨今の原油価格の動向や世界的な金融危機の発生などによる経済成長への影響が今後のロシアの政策にいかに作用するかが注目される3


 
1)プーチン大統領(当時)が昨年2月に行った「2020年までのロシアの発展戦略」とする演説の中で、「軍事力整備への配分は、国の能力に適合したものとし、社会・経済発展を犠牲にしてはならない。」とも述べている。

 
2)メドベージェフ大統領は、昨年11月の年次教書演説の中で、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)拡大への懸念や米国の一極化に反発し、国際社会における多極化の必要性などを述べ、プーチン政権時と同様の考えを表明している。

 
3)昨今の原油価格低迷や金融危機の影響もあり、昨年の経済成長率は、5.6%とこの数年では最も低いものであった。(2007年は8.1%)


 

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