第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

7 10会計年度予算

 米国は眼前の課題と将来にわたる軍事的優位の確保という要請の間で限られた資源をいかに配分するかという課題に直面している19。10会計年度予算教書は、その主要な目標を、1)全志願制の軍隊を維持するための取組の強化、2)今日および将来の任務遂行能力強化のための国防省プログラムの再構成、3)国防省の調達・取得・契約方法の抜本的な見直しの開始、4)戦地部隊を支援するために必要な資源の提供の4つとしており、部隊およびその家族の支援、軍の再構築、能力の近代化、調達の見直し20、戦地部隊の支援を主な内容として、09会計年度の立法化成立予算の水準から約4%増の、5,338億ドルを計上するとともに、海外における事態対処作戦の予算21として、補正予算の形で1,300億ドルが計上されている。
(図表I-2-1-3 参照)
 
図表I-2-1-3 米国の国防費の推移


 
19)オバマ大統領は、本年2月の議会演説において、使用することのない冷戦時代の兵器システムへの支出を削減するよう国防予算を修正するとしている。ゲイツ国防長官も、現在と将来の能力の間で資源投入量の再評価などが必要であるとしている(国防省HP(本年2月26日))ほか、昨年の国家防衛戦略は次の三分野におけるバランスを追及していることを指摘している。1)目下の紛争での勝利と他の緊急事態への備え、2)反乱勢力対策および対外軍事援助の促進と他国軍に対する通常兵力および戦略分野での技術的優位の維持、3)米軍の成功を可能とした文化の保持と米軍の任務遂行を阻害する文化からの脱却(フォーリン・アフェアーズ誌本年1・2月号寄稿論文)

 
20)オバマ大統領は、今や浪費と非効率を終わらせる時であるとし、国防調達の契約制度を見直す方針を表明した。(本年3月4日)

 
21)ブッシュ前政権における対テロ戦費に相当するものであり、イラクおよびアフガニスタンでの活動費を含む。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む