第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

4 戦力構成

 06(同18)年のQDRは、01(同13)年のQDR8から「能力ベース」アプローチ9を踏襲しつつ、近年の作戦における経験などから、四つの重要な地域のみならず、世界中で作戦を行う必要があること、また、「迅速な打破」や「決定的勝利」という考え方は、長期にわたる非正規型戦闘などに必ずしもなじまないことなどが明らかになったとして、1)本土防衛、2)テロとの闘い・非正規型戦闘、3)通常作戦の三つの領域において以下のような能力を備えた戦力を構成するとしている。
1) 本土防衛:通常時においては、米本土に対する外部からの脅威を抑止するとともに、政府関係機関などが本土防衛に貢献できるよう、共同訓練などにより所要の支援を行う。非常時においては、大量破壊兵器などによる攻撃に対処するとともに、攻撃により発生した被害の局限に努める。
2) テロとの闘い・非正規型戦闘:通常時においては、前方展開戦力などにより国境横断型のテロ攻撃の抑止に努めるとともに、友好国などの能力強化や反政府勢力に対する掃討作戦などを行う。非常時においては、イラクやアフガニスタンにおける取組に相当する規模で、長期にわたる可能性もある非正規型戦闘を行う。
3) 通常作戦:通常時においては、前方展開戦力により他国からの侵略や威嚇を抑止するとともに、軍事交流や共同訓練といった安全保障協力を通じて友好国などの能力強化に努める。非常時においては、ほぼ同時に発生する二つの通常作戦(既に大規模かつ長期的な非正規型戦闘を行っている場合には、一つの通常作戦)を遂行するとともに、危機に乗じた別の侵略行為が発生しないよう抑止態勢を強化する。
(図表I-2-1-1 参照)
 
図表I-2-1-1 QDR2006における戦力構成の考え方


 
8)01(平成13)年のQDRは、1)米本土を防衛すること、2)4つの重要な地域(欧州、北東アジア、東アジア沿岸部、中東・南西アジア)において前方抑止すること、3)同時に二つの戦域において敵を迅速に打破し、うち一つで決定的に打破すること、4)限定的な数の小規模緊急事態に対処すること、という四つの目的のために戦力を構成するとしていた。

 
9)米国の脅威がいつどこで出現するかは、現在の安全保障環境では予測困難であるが、敵がどのような能力を用いて米国を攻撃するかは予測可能であることから、「能力ベース」の戦略では、敵の能力に対処するために、どのような能力が必要かに焦点を当てる。


 

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