第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 能力強化の重点分野

 昨年の国家防衛戦略は、06(同18)年2月の「4年毎の国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)7で指摘された以下の4つの重点分野における能力強化について、引き続き、特に注目を要するものとして重要性を強調している。
1) テロ・ネットワークの打破:非正規型の脅威に対処するには、テロ・ネットワークへの執拗な攻撃により、テロ・ネットワークによる聖域確保を阻止することが必要である。このため、米軍は、情報収集能力や特殊作戦能力などの向上に加えて、政府関係機関との連携強化や他国の治安部隊への訓練などにも努めることとしている。また、軍事面のみならず、思想面においてもテロ・ネットワークに勝利するためには、戦略広報(Strategic Communications)の強化や語学教育の充実などに取り組む必要があるとしている。
2) 本土防衛の強化:米本土に対する脅威に対処するためには、侵略に対する抑止態勢を維持するとともに、政府関係機関との協力関係を強化する必要がある。このため、ミサイル防衛などにより抑止力を強化するとともに、政府関係機関との連携要領を充実させることで、攻撃発生後の被害拡大を防ぐ能力も向上させるとしている。
3) 戦略的岐路にある国家の選択肢形成:米国は、安全保障協力の拡大などにより、今後の安全保障を左右する可能性のある国家が国際社会における建設的なパートナーとなるよう働きかける一方、そうした働きかけが失敗した場合に備えて、同盟国などの能力を強化するとともに、米軍の軍事態勢見直しや重要分野における優位の維持などに努めることとしている。
4) 大量破壊兵器の取得または使用の阻止:敵対的な国家などによる大量破壊兵器などの脅威に対処するためには、予防措置と対応措置の双方が必要となる。したがって、米軍は、予防措置として、大量破壊兵器関連物資の特定・追跡に関する能力向上などに努める一方、大量破壊兵器などによる攻撃が発生した場合に備えて、被害を軽減するために必要な能力などを構築することとしている。


 
7)QDRは、国防長官が合衆国法典第10篇第118条に基づき4年ごとに議会へ提出することが義務付けられている文書で、今後20年の安全保障環境を見据えた上で、国防戦略、戦力構成、戦力近代化計画、国防インフラ、予算計画などに関する方針を明らかにするものであり、06(平成18)年のQDRは、当時のブッシュ政権下で発表されたものである。なお、本年は、同法典で定められた見直しの時期にあたり、国防省は、本年4月に実施したQDRの背景説明において、既に見直しは進行しており、来年初頭までに議会に報告される予定としている。


 

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