第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 国防戦略

 米国は、昨年の国家防衛戦略において、このような安全保障環境における戦略目標として、1)本土防衛、2)暴力的過激主義との「長い戦争(Long War)」での勝利3、3)安全保障の促進、4)紛争の抑止4、5)戦争における勝利をあげるとともに、その実現方法として、次の5点を指摘している。
1) 主要国の選択肢を形成:同盟国および友好国と協力し、国際的な安全保障環境や戦略的国家が直面する選択肢などの形成を支援する5
2) 敵対者による大量破壊兵器の取得および使用を防止:大量破壊兵器によって引き起こされる問題は最も深刻なものであり、大量破壊兵器の拡散および使用を防止するためには、警戒が要求されるとともに、脅威を予期し、対処することが必要となる6
3) 同盟およびパートナーシップの強化、拡大:同盟は、成功の鍵として引き続き重要である。安全保障協力を通じて他国の能力向上を支援するとともに、他国から価値ある技能や情報を習得する。
4) 戦略的アクセスの確保と行動の自由を保持:米国の安全保障上世界の重要地域への戦略的なアクセスなどが必要であり、世界経済にとって極めて重要なエネルギー資源の入手手段と流通を強化し続ける。また、世界的に展開する米軍の態勢の見直しを継続する。
5) 統合的・一体的取組(新たな「統合」):イラクとアフガニスタンの教訓から、勝利のためには軍事的成功のみでは不十分であり、軍事以外の能力も活性化させ、必要となる手段を統合し、適合させ、適用する能力を強化しなければならない。


 
3)当面、暴力的過激主義との長い戦争に勝利することは米国の中心的な目標になるとしており、米国は武力による衝突、思想の戦争、そして忍耐と改革が求められる支援のための取組に直面しているとする。また、テロリストに対する軍事的な取組は、開発を励行し政治と経済事業に参加を促す対策を補助するものと思われ、この闘いにおける勝利とは、過激主義者の思想が正しくないことを示し、過激主義グループ間に亀裂を生じさせ、法執行能力により追跡し対処できる程度に過激主義グループを弱体化させることであると指摘している。

 
4)抑止は、テロリズムのように、その目的が目標の破壊ではなく、攻撃自体にあるような場合には不可能であると指摘しており、このため、従来のように攻撃に対抗する能力だけではなく、攻撃を受けた後の回復力と作戦能力が重要であるとしている。

 
5)中国およびロシアを責任あるステークホルダー(Responsible Stakeholder)として国際社会の内に組み込む必要があるとともに、インドもその国力にふさわしい責任あるステークホルダーになることを期待するとしている。

 
6)この目的を達成するため、可能な限り非軍事の選択肢を採用するが、必要な場合には、敵対行動に先んじて、予防的に自衛権を行使して先制的に行動するとしている。


 

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