第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 イラクにおける諸外国の部隊の動向

 イラク治安部隊の能力向上や現地の情勢の改善などが進展した地域においては、多国籍軍からイラク当局への治安権限移譲も進んでいる。陸上自衛隊が人道復興支援活動などを行っていたイラク南東部のムサンナー県を皮切りに、昨年末までに、イラクの18県のうち13県において治安権限が移譲された。
(図表I-1-3-1 参照)
 
図表I-1-3-1 治安権限移譲の状況

 イラク駐留多国籍軍のマンデートは、07(平成19)年12月に採択された安保理決議第1790号により昨年末まで延長されたが、それ以降の多国籍軍の活動のあり方などについては、イラク政府と米国などの関係国との間で議論が行われてきた1。その結果、昨年11月、イラク国民議会は、イラクにおける米軍の一時的な駐留、活動および撤退などを規定する米国との協定案などを採択し、本年初めに発効した2。このほか、イラク政府は、英国、豪州などとも同様の協定を締結している。
 このような情勢の変化を受け、各国は派遣部隊を撤収またはその規模を大幅に縮小してきており、昨年11月の時点では21か国が合計約15万人の部隊をイラクに派遣していたが、同年末までに、米国などを除き多くの派遣国が部隊を撤収した。米国は、07(同19)年1月以降に増強した部隊規模を昨年7月までに削減したほか、本年2月までに約8,000人を削減した3。本年1月に就任したオバマ米大統領は、同年2月、10(同22)年8月末までにイラクにおける米軍部隊による戦闘任務を終了させると発表した。


 
1)07(平成19)年12月に安保理に提出された多国籍軍の駐留延長を要請する文書において、マーリキー・イラク首相は多国籍軍のマンデート延長を要請するのは今回で最後になると考えている旨表明した。

 
2)この協定には、本年6月末までの米軍戦闘部隊のイラク都市部などからの撤退、11(平成23)年末までのすべての米軍部隊のイラク領内からの撤退などが規定されている。

 
3)本年3月、米軍は、今後半年間でさらに陸軍2個旅団を削減すると発表した。


 

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