第3節 イラクをめぐる情勢など
1 イラクの治安情勢および政治情勢
イラクでは、イラク自身や米国などによる治安回復へ向けた努力もあり、07(平成19)年後半からは、イラク国民などに対する攻撃の発生件数およびテロなどによる犠牲者数が減少するなど、治安の改善がみられる。こうした治安改善の要因としては、多国籍軍やイラク治安部隊による効果的な対テロ作戦、イラク治安部隊の増強、イラク国民による暴力と過激主義の拒絶などが挙げられている
1。
他方、こうした治安の改善は依然脆弱なものであり、治安情勢については、停滞または悪化しうるとの指摘がある
2。また、周辺国からの影響も指摘されており、イランに関しては、イラク国内の民兵組織に対する武器や訓練の支援を行ってきているとの指摘がある。また、シリアに関しては、イラクへのテロリストなどの主要な流入経路となっているとの指摘がある
3。
イラク情勢の安定のために、治安対策のみならず、イラク政府による自発的な国民融和促進のための政治的取組が進められている。昨年、イラク国民議会は、03(同15)年以降に公職を追放された旧バアス党員などの公職復帰を可能とする「責任と公正」法案、一般恩赦法案や地方自治法案などの重要法案を採択し、昨年7月には、07(同19)年8月に政権を離脱したイラク合意戦線(タワーフク)が政権に復帰した。また、本年1月末には、イラク憲法制定後初の地方議会選挙が一部の県を除き行われるなど、イラクの国民融和達成に向けた重要な進展がみられた。
一方で、キルクークなどの係争地の帰属などが未解決であり、また、石油・ガス法案はいまだ採択されていないなど依然として課題が多い。