第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 アフガニスタンおよびその周辺におけるテロに対する取組など

 9.11テロ直後の01(平成13)年10月以来、米国は、各国とともに、アフガニスタンおよびその周辺において、アルカイダやタリバーンに対する軍事作戦を継続している。また、インド洋においては、各国により、テロリストおよびその資金源となる麻薬、武器などの関連物資の拡散や流入の阻止を目的とした活動が続けられている。
 アフガニスタンでは、タリバーンなどによる攻撃事案が増加し、不安定の度合いを強めており、今後の見通しは予断を許さない状況にある。特に、パキスタンと国境を接する南部および東部の治安は懸念すべき状況にある。また、従来は比較的治安が安定していた首都カブールや北部、西部でも爆弾テロなどが発生している。このような状況の中で、アフガニスタン国軍や警察の整備などアフガニスタン政府による治安改善のための努力とともに、国際社会による取組も行われてきている。アフガニスタン国軍や多国籍軍などは相互に連携をとりながら、掃討作戦を行っている。国際治安支援部隊(ISAF:International Security Assistance Force)1はカブールにある総司令部の下に5個の地域管区を置き、アフガニスタン全土で治安の維持について同国政府を支援している。また、26個の地方復興チーム(PRT:Provincial Reconstruction Team)が、各地で治安環境改善および復興の支援事業を行っている。なお、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA:United Nations Assistance Mission in Afghanistan)による活動も引き続き行われている。
 アフガニスタンと国境を接するパキスタンにおいて、国境地域の連邦直轄部族地域(FATA:Federally Administered Tribal Areas)は引き続きアルカイダ、タリバーンや多くの過激主義勢力の重要な拠点となっており、アルカイダが、タリバーンなどとともに要員の訓練のほか、アフガニスタンにおける攻撃の支援や、パキスタンなどにおける同国や欧米諸国などの権益を標的とした攻撃の計画を行っているとみられている2。このような中、パキスタン政府は、国境地域においてテロリスト掃討作戦などを行っている。
 なお、本年1月に就任したオバマ米大統領は、同年3月にアフガニスタンおよびパキスタンに対する新たな戦略を発表するなど3、テロに対する取組を重視する姿勢を示している。


 
1)安保理決議第1386号(01(平成13)年12月20日)により、カブール周辺の治安維持を主たる任務として設立。安保理決議第1510号(03(同15)年10月13日)により、03(同15)年12月以降、展開地域を逐次拡大し、06(同18)年10月からはアフガニスタン全土に展開している。本年4月現在、42か国から約5万8,000人の兵員が派遣されている。

 
2)米国国防情報局(DIA:Defense Intelligence Agency)長官「年次脅威評価」(本年3月)

 
3)米国は、この新たな戦略において、1)パキスタンに対する年間約15億ドルの支援を5年間行うことを議会に要請、2)米国、アフガニスタンおよびパキスタンとの間で定例の対話の開始、3)すでに本年2月に決定していた約1万7,000人の米軍部隊の増派に加え、アフガニスタン治安部隊の訓練を目的とした約4,000人の米軍部隊を増派、4)文民要員の増加、などを表明している。


 

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