第III部 わが国の防衛のための諸施策
第1章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と多様な事態への対応
防衛大綱において明示されたわが国の防衛のための自衛隊の対応、たとえば弾道ミサイル攻撃への対応、ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応、島嶼部に対する侵略への対応、周辺海空域の警戒監視および領空侵犯対処や武装工作船などへの対応大規模・特殊災害などへの対応など、新たな脅威や多様な事態および本格的な侵略事態への対処を適切に行い得るよう取り組んでいる。
昨年12月の海自イージス艦「こんごう」へのBMD能力付与や本年3月までに実施した首都圏所在高射隊などへのペトリオットPAC3配備のほか、運用面においても緊急対処要領を変更するなど弾道ミサイルなどに実効的に対応するため、各種努力を行っている。
また、武力攻撃事態等における国および国民の平和と安全を確保するための法制などの整備や、自衛隊の運用体制の整備など、各種事態に際して自衛隊が任務を迅速かつ効果的に行うための努力を継続している。
第2章 日米安全保障体制の強化
日米安全保障体制およびそれを基盤とする日米同盟は、わが国防衛や地域の平和と安定、さらには国際的な安全保障環境の改善において、重要な意義を有している。
日米両国は、近年、同盟関係を安全保障環境の変化に応じて発展させていくため、兵力態勢の再編を含む日米同盟の将来に関する日米協議に取り組み、06(平成18)年5月の「2+2」会合において「再編実施のための日米のロードマップ」を取りまとめた。
現在、わが国では、昨年5月に成立した「駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法」に基づき、再編を促進させるための取組など、各種施策を着実に実施しているところである。
このほかにも、わが国では日米間の各種協議や法整備、日米共同訓練、装備・技術面での交流および在日米軍施設・区域に関する諸施策など、日米安保体制の実効性の確保、信頼性の向上のため不断の努力を行っている。
第3章 国際的な安全保障環境の改善
防衛大綱においては、国際的な安全保障環境を改善し、わが国に脅威が及ばないようにすることをわが国防衛とともに、安全保障の目標としている。
イラクにおいては、イラク人道復興支援特措法に基づき、現在も国連および多国籍軍への支援を行い、イラクの復興および安定に協力している。
国際的なテロとの闘いにおいては、本年1月に成立した補給支援特措法に基づき、インド洋上において海自部隊が海上阻止活動に参加する各国に対し給油や給水などの補給活動を行っている。
国際平和協力活動においては、本年6月、国連スーダンミッション(UNMIS)に対し、自衛隊から司令部要員を派遣することとなった。この他、ゴラン高原の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)や、国連ネパール政治ミッション(UNMIN)における活動も継続している。
また、安全保障対話・防衛交流の質的深化・量的拡大を通じて、国際的な安全保障環境の改善に向けて積極的に取り組んでいる。
さらに、拡散に対する安全保障構想(PSI)を含め、軍備管理・軍縮・不拡散にも主体的・積極的に取り組んでいる。
第4章 国民と防衛省・自衛隊
防衛力の中核である自衛隊が任務を遂行するためには、国民の理解と支援を得ることが不可欠であり、また、人的および物的な基盤を整えることが重要である。
防衛力の基盤には、まず組織と人的基盤があげられ、装備やシステムの運用だけではなく、組織の運営なども結局は、隊員一人ひとりの力量にかかっている。
防衛省・自衛隊は、実力組織である陸上・海上・航空自衛隊を中心にさまざまな組織で構成され、人的基盤の確立のため、隊員の募集・採用、教育訓練から退職・再就職に至るまで、必要な諸施策を実施している。
また、情報通信は、指揮中枢と各級司令部、末端部隊に至る指揮統制の基盤であり、その能力を強化するための取組を重視している。
技術研究開発においては、運用面のニーズを見据えつつ、新たな研究開発手法や産学官の優れた技術の導入などにより、最新の科学技術の取り入れに努めている。
自衛隊は、さまざまな形で地域社会、国民から支援と協力を得て任務を遂行し、自衛隊からも、民生支援として協力活動を行っている。こうした活動は、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めている。
また、防衛施設がその機能を十分発揮させるためには、周辺住民の理解と協力を得て、常に安定して使用できる状態を維持することが必要であり、防衛施設の設置・運営が周辺住民の生活に及ぼす影響をできる限り少なくするよう配慮している。