第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)研究開発(新戦車)に携わる技官の声

技術研究本部陸上装備研究所システム研究部戦闘車両システム研究室長
防衛技官 博士(工学) 志村明彦(しむらあきひこ)


 私は戦闘車両システムについての研究や性能評価を行う研究室の室長をしています。
 現在、私の研究室は新戦車の技術試験を担当しています。技術試験とは、試作品が必要とされる性能を有しているかどうかを評価するための試験です。試作品は技術試験による評価を受けた後、部隊による実用試験を経て、装備品として採用の可否が決定されることになります。
 戦車は「火力」、「機動力」、「防護力」の3つの要素を高度にシステム化した装備であり、評価すべき項目は多岐にわたります。特に、この新戦車は従来からの3つの要素に加え「通信・情報」を強化したIT戦車であり、また高い性能を持つため、高度な試験が要求されます。
 試験の際は、研究室員を中心に陸上自衛隊からの支援隊も加え、試験隊を編成します。また、戦車の性能をあらゆる技術的角度から評価するため、所内の他研究室や場合によっては他研究所などの専門技術者にも参加してもらいます。陸上自衛隊の演習場や技術研究本部の試験場などで実施しますので、長期間出張することになりますが、試験は出張期間中だけではなく、その前後の準備やデータ整理がとても大切です。周到な準備や綿密なデータ整理なくしては正しい評価は得られません。そのため腰を据えた取り組みをしたいのですが、各種の試験が間断なく続きますので、試験隊要員の確保にはいつも苦労させられます。
 室長としての仕事は管理業務が多いため、室員だった頃と比べると自らが試験に参加することは少ないのですが、平成19年度は試験隊長として2つの試験を指揮しました。そのうちの上富良野演習場で行った試験は、新戦車が走行しつつ、動いている目標を射撃するもので、技術試験の中でも技術的に最も高度なものの一つです。厳寒の積雪地での実施ということもありさまざまな苦労がありましたが、標的の中央付近に弾痕が集中しているのを確認したときは、新戦車の性能に驚嘆するとともに、自分たちの試験の成功をうれしく、また誇らしく感じました。
 新戦車の技術試験は平成21年度まで続きますので、これからも多忙な日々が続くと思いますが、将来の陸上装備の骨幹となるであろう新戦車を、要求性能を満足する素晴らしいものとして折り紙つきで陸上自衛隊に引き渡せるよう、研究室の皆と頑張っていきたいと思います。
 
技術試験を行う志村室長
 
研究開発中の新戦車

 

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