第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)日中防衛交流担当者の声

海上幕僚監部 防衛部 2等海佐 北川敬三(きたがわけいぞう)


 中国の古典の『荘子』に「君子の交わりは淡きこと水の若し」、すなわち立派な人物の交際は、水のように淡々とした交わりであり、いつまでも飽きが来ないので長続きする、という教えがあります。この教えこそ、防衛交流の目指すべきものであると思います。
 私は海上幕僚監部防衛課防衛班の対外政策担当として、海上自衛隊がわが国の防衛交流の一手段として、いかに寄与できるかを日々考えています。地球儀を見ながら、各国海軍との交流を考える、とてもやりがいのある仕事です。
 業務の一環として各国海軍との幕僚協議を所掌していますが、防衛交流は単に「対話」をするという時代から、行動と協力がともなう「中身」が要求される時代になっていることを実感しています。
 さて、日中防衛交流で海上自衛隊の果たす役割は何でしょうか。一国の海上防衛力は、艦艇が外国を訪問するという「国際性」を有し、古来より国家の「外交」の一手段として位置付けられてきました。海を隔てて古(いにしえ)の時代から「船」を用いて交流を行ってきた日中の関係を考えると、海上自衛隊が日中防衛交流の深化に寄与できることが理解していただけると思います。
 平成19年度以降の日中防衛交流の活発化は目覚ましいものがあります。海自の関係するものとして、昨年9月の中国人民解放軍国防大学の佐官級幹部教育課程へのわが国から初の留学生派遣と昨年11月末から12月初めにかけての駆逐艦「深(しんせん)」の中国艦艇としての初訪日が挙げられ、大きな達成点として特筆すべきものであると考えています。特に「深」の訪日は、中国海軍軍人の考えを直接聞く貴重な経験となりました。
 また、海自艦艇の訪中および海上幕僚長と中国人民解放軍海軍司令員とのハイレベル交流も合意されています。日中防衛交流は、両国の外交関係に比して、まだ黎明期にあると言えますが、と同時に、これから深化するという期待感のある将来性のある交流であると認識しています。したがって、中国とは冒頭申し上げた格言のような関係となるよう、私自身Think Globally, Act Locallyをモットーに同国との防衛交流を進めていきたいと考えています。
 
北川敬三2佐

 

前の項目に戻る     次の項目に進む