第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)国連ネパール政治ミッション(UNMIN)で勤務した隊員の声

中央即応集団司令部付 ネパール国際平和協力隊長(1次要員)
 1等陸佐 石橋克伸(いしばしかつのぶ)
(現所属:陸上自衛隊幹部学校付)


 私は、全国から集まった陸上自衛官5名とともに、平成19年3月31日から約1年間、国連ネパール政治ミッション(UNMIN)に軍事監視要員として参加し、約80か国から派遣された軍事監視要員やネパールの仲間たちと一緒になって、武器や兵士の管理・監視業務を行ってきました。
 現地における主な活動としては、マオイスト軍やネパール国軍のキャンプに入り、武器の保管と彼らの活動を監視することでした。マオイスト軍の監視にあたっては、他国の軍事監視要員3〜5名やびネパール人通訳たちと一緒にマオイスト軍キャンプ内に宿泊して勤務しました。活動当初は、宿泊・業務施設なども十分に整備されておらず、40度を超える気温の中、テント内で蚊に悩まされながらの勤務でしたが、徐々にプレハブ施設などが整備され、快適とは言えないまでも、何とか1〜2週間は耐えることができる環境が整備されていきました。しかし、もっとも大変だった事は、生まれ育った環境、宗教、価値観などが異なる仲間との共同生活でした。たとえば、赤道直下から来た要員と北極の近くから来た要員では暑さの感じ方もまったく異なるし、宗教によっては同じ食事をとることもできません。業務要領にしても、計画的に行動する者もいれば、計画を立てず現場の状況に応じて対応するという者もいます。軍事監視要員達は、各国の代表、国連の一員として分別を持って活動していますが、時には、誤解が生じたりすることもあり、生活そのものの困難さに加え、様々な人間関係も大きなストレスになっていました。しかしながら、日本人の特性である謙譲や和を大切にする行動は、よい雰囲気作りに役立っていたと思います。また、任務に忠実で、約束や時間を守る姿勢、自衛隊で養った業務遂行能力も相まって、UNMIN内では日本人の活動は高く評価され、現地では指導的な役割を果たしていました。
 我々の活動は、日本に課せられた国際社会の義務を現地において果たすという意味において意義のあるものであったと考えていますが、日本人の素晴らしさをネパールや世界にアピールするという点でも、多少の貢献ができたのではないかと感じています。
 
他国のUNMIN要員と調整する石橋1佐(左から2番目)

注:マオイスト=ネパール共産党毛沢東主義派の通称

 

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