第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)米空軍における操縦課程教育を終了した隊員の声

航空自衛隊 飛行教育航空隊第23飛行隊 操縦学生 1等空尉 木村展丈(きむらのぶたけ)


 「外国人だから仕方ないな。」
と言われた時、自分ではどうすることもできない事実に悔しくて、とても情けない思いがしました。それは差別ではありません。私が訓練中失敗したり、教官の指導に対する理解が遅かった時に言われた言葉です。
 “米国だから”という理由で苦労した点は特にありませんが、精神的にとても辛かった時期もありました。
 けれども、辛い事ばかりではありませんでした。
 それは、この米空軍の操縦教育の現場から世界が見えることです。
 世界最強の空軍の組織の内側を見ることができ、そこから世界各地の紛争や軍隊の動きを垣間見ることができました。紛争は、政治や経済、宗教、歴史など様々な要因が複雑に関係するものであり、この課程での教育において、広い視野で物事を捉えることができるようになりました。
 また、米国で一緒に訓練を受けた世界各国の友人は一生の宝物です。
 さらに、課程修了時に優秀者表彰を受けることになり、自分の努力が形となって残ったことはとても名誉なことでした。ただ、優秀者表彰を受けても戦いに勝てなければ、自分の存在の価値に意味はありません。次の目標に向かい、努力を惜しまないつもりです。
 米国から帰国し、現在の目標はF-15操縦課程を卒業して部隊で一人前のパイロットになること。そしてその先は、世界に通用するパイロットになることです。
 また、将来の選択肢の1つとして、米国のテストパイロットスクールにも進みたいと考えています。大学院(総合政策学部政策・メディア研究科)での研究や米国での操縦訓練を受けた経験を活かすことができ、将来戦闘機の開発などにかかわる可能性も広がると思っています。
 米国の操縦課程の履修は、操縦技術の修得はもちろん、同時に高い英語能力を修得できます。個人の英語能力の向上は、結果として組織の力にもなります。チャンスがあれば是非、挑戦すべき教育課程であり、そこで得られるものの価値は、非常に大きいと思います。
 
米空軍AT-38練習機のコックピットに搭乗する木村1尉

 

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