第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

(解説)ロシア軍による地中海・北大西洋方面での大規模演習の実施

 昨年12月から本年2月にかけて、ロシア海軍と空軍は、地中海・北大西洋海域において大規模な演習を実施した。ロシア海軍空母部隊による地中海方面への展開は96(平成8)年以来であり、また、3個艦隊が参加する海軍演習はソ連崩壊後初めてである。
 ロシアは、昨年以降、米国の東欧MD配備計画に対する反発やCFE条約の履行停止など、米国・NATOに対して強硬な姿勢をみせており、昨年8月には、戦略爆撃機部隊による定期的な哨戒飛行の再開が発表された。今回の遠洋航海演習も、欧州方面におけるロシアのプレゼンスの誇示を意図したものとみることができる。なお、海軍との合同演習に参加し、北大西洋上を飛行していたロシア空軍機に対し、英国とノルウェーがスクランブル対応を行っている。
 その一方、ロシア軍は今回の演習の中で、フランス、イタリアおよびポルトガルと対テロや親善を目的とした共同訓練を実施した。これらの国々は地中海を経由したテロ活動の波及を警戒しているとみられており、利害の一致する対テロなどの分野においては、ロシアは引き続き、欧州各国と協力関係の構築に努めていくものと考えられる。
 ロシア海軍総司令官は、遠洋航海演習を終えて北洋艦隊のセヴェロモルスクに帰港(2月3日)した際、「ロシアは世界の海洋でのプレゼンスを構築するため、今回と同様の航海を半年に1度は遂行する予定」と述べており、今回のような地中海方面への部隊展開が今後も継続されるか注目される。

演習の概要
●ロシア海軍による遠洋航海演習
期間:2007年12月5日〜2008年2月3日(帰港)
主航路:地中海、ビスケー湾(フランスおよびスペインの北側)・大西洋北東部(英国沖)〜北極海(ノルウェー沖)
参加艦艇:空母「アドミラル・クズネツォフ」、ウダロイ級駆逐艦「アドミラル・レフチェンコ」、スラバ級ミサイル駆逐艦「モスクワ」など、計11隻
●ロシア空軍による遠距離航空演習
期間:2008年1月24日〜2月2日
主航路:大西洋北東部(英国沖)〜北極海(ノルウェー沖)
 
演習に関連するロシア軍の行動概要

 

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