第IV部 防衛省改革 

2 総合取得改革推進のための取組


(1)一般輸入調達問題への対応
 前述のとおり、昨年11月、(株)山田洋行が防衛省に納入した輸入装備品2件の契約について過大請求を行っていたことが判明するなど、輸入調達にかかわる複数の事案が明らかになった。
 この問題への対応として、以下のような取組を行っている。
1)過大請求の発見、抑止のため、海外製造メーカーへの見積書の直接照会などの実施
2)装備施設本部輸入調達専門官を現行3名から10名に増強し、米国における現地価格調査の機能強化(本年度)
3)海外製造メーカーの参入を容易にするための環境整備を継続的に行い、直接契約を推進(英語による入札参加案内、説明会の実施など)
4)装備施設本部に輸入調達の専担部署を21年度予算要求
5)公認会計士、商社経験者など部外専門家の活用
6)過大請求事案に対する制裁措置を強化(過払い額の返還に加えて、現状では過払い額と同額の違約金を徴収しているが、これを2倍にする)(本年度)
7)商社などの有する経理会計システム上の記録と防衛省に提出した見積書の照合を行うとともに、社内不正防止、法令順守体制などについて調査を行う輸入調達調査を導入(本年度)

(2)装備品のライフサイクルコスト管理の強化
 防衛省の装備品は、相当な期間と費用をかけて構想から開発を経て量産され、量産後は長期間使用されるのが通例である。装備品の構想、開発、量産、運用(維持・修理・改修を含む)、廃棄に至るライフサイクル全体に要するコスト(LCC:ライフサイクルコスト)は、これまで個別装備品ごとについて部分的な見積りが行われてきた。
 LCC管理の全省的な取組を推進するため、本年3月、LCC管理手続及び算定要領を整備し、主要装備品のLCC管理に試行的に着手したところである。また、諸外国などで活用されているIPT2手法を参考にした組織横断的な連絡調整会議設置や、統一的なLCCの算定方法の確立などの取組を行っていく。

(3)コスト抑制のための達成目標の設定
 装備品関連事業を対象に、民生品・民生技術の活用、一括調達、維持整備方法見直しなどの効率化施策により、06(平成18)年度と比較したコスト縮減率を、09(同21)年度までに9%、11(同23)年度までに15%とする包括的なコスト縮減達成目標を初めて設定した。

(4)インセンティブ契約3の拡充
 現行のインセンティブ契約は、99(同11)年の導入後の活用例は2例にとどまっていたため、インセンティブ効果を高め、活用を広げるため、制度全体を見直して企業コストダウン活動を活発化する企業提案に対して審査手続の面から改善を図るなど新制度を本年度より導入する。

(5)民間委託の拡充
 装備品の高度化、任務の多様化に対応するためには、個別業務ごとに部外委託を検討する従来型の民間委託だけでは限界があり、総合取得改革の観点から、トータルコストの把握を含む費用対効果を分析しつつ、更なる民間委託の拡充のための新たな手法の活用(PFI4など)を推進していく。
 
PFI事業で実施した海自呉史料館

(6)FMS(Foreign Military Sales)の一層の改善
 FMSは、米国政府が武器輸出管理法に基づき、武器輸出適格国に対し装備品などを有償で提供するものであるが、価格内訳の開示が十分でないなどの課題が存在している。今後とも、価格内訳の入手拡大など更なる改善に努力していく。

(7)統合運用の視点に立った装備品取得
 これまでも、統合運用を前提とした1)装備品間の仕様の整合化、2)装備品の共通化、3)各自衛隊の指揮システム・業務システムの統合化、4) 1)〜3)に資する研究開発を行ってきた。今後も、救難・衛生、輸送、警戒監視などの分野において統合運用に資する適切な装備品整備について検討を促進するとともに、装備品にかかわる検討・調整枠組みの具体化、各自衛隊間での在庫情報・仕様書情報を共有するシステム構築などの取組を行っていく。

(8)技術研究開発の評価の強化など
 総合取得改革の観点からの研究開発評価が必ずしも十分ではなかったため、防衛大臣政務官を委員長とする技術評価委員会を設置し、新たに実効性のある評価体制を構築する(本年度)。
 また、効果的・効率的な研究開発に資する国際協力を推進するため、各国との技術交流をより活性化するとともに、国際共同研究・開発に係る背景や利点・問題点などについて一層の検討を深める必要がある。

(9)中央調達・地方調達の見直し
 地方支分部局において契約の第三者機関による監視を行うため、各地方防衛局の入札監視委員会を見直し、装備品などに関する契約監視を行う(本年度)。
 また、透明性の一層の向上のため、中央調達のみ行っている高額な随意契約の大臣承認について、業務効率に配意しつつ、地方調達でも行う(中央調達と同様、主要な装備品1.5億円以上の契約を対象)(本年度)。

(10)装備品選定についての計画段階・調達段階の業務分担のあり方
 より透明で効率的な装備品選定手続を具体的に検討の上、次期救難ヘリまたはその他の適当な装備品について、防衛政策局が機能・性能、経理装備局が機種・取得方式などを担当する形での業務分担の変更についての試行を実施する。(選定手続の検討等のために、本年4月、組織横断的作業チームを設置)
 また、航空機の機種選定について手続の見直しを図り、更には競争入札方法の適用拡大を検討する。


 
2)IPT:Integrated Project Team。ある事業における特定の問題解決を効率的に図るため、関係する部門や利害関係者の間の情報共有と意見調整を図る組織横断型の合議体(チーム)。欧米諸国における防衛装備品の取得業務や、民間企業のプラント建設や情報システム開発などの業務においても、この手法が用いられている。

 
3)受注する民間企業の努力によりコストの低減が生じた場合に、低減額の一部を企業側に付与することにより、民間企業のコスト削減への動機付け(インセンティブ)を高め、調達価格の低減を実現する制度。

 
4)民間の資金、経営能力及び技術力を施設整備などに活用すること。


 

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