第III部 わが国の防衛のための諸施策 

3 補給支援特措法と実施計画の概要


(1)目的
 この法律は、1)わが国が旧テロ対策特措法に基づき、テロ対策海上阻止活動を行う諸外国の軍隊などに対して実施した海上自衛隊による給油などの協力支援活動が、国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会の取組に貢献し、国連安保理決議第1776号4においてその貢献に対する評価が表明されたこと、2)9.11テロ攻撃による脅威がいまだ除去されていない現状において、安保理決議第1368号、第1373号などがすべての国連加盟国に対し国際的なテロリズムの行為の防止などのために適切な措置をとることを求めていることを受けて、国際社会が国際的なテロリズムの防止・根絶のための取組を継続し、その一環として、諸外国の軍隊などがテロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っていること、3)安保理決議第1776号において当該活動の継続的な実施の必要性が強調されていることにかんがみ、テロ対策海上阻止活動5を行う諸外国の軍隊などに対し補給支援活動6を実施することにより、わが国が国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会の取組に引き続き積極的かつ主体的に寄与し、もってわが国を含む国際社会の平和と安全の確保に資することを目的とする。

(2)基本原則
ア 政府は、補給支援活動を適切かつ迅速に実施することにより、国際的なテロリズムの防止・根絶のための国際社会の取組にわが国として積極的かつ主体的に寄与し、もってわが国を含む国際社会の平和および安全の確保に努めるものとする。
イ 補給支援活動の実施は、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない。
ウ 補給支援活動は、次の地域で行う。
(ア)わが国領域
(イ)現に戦闘行為7が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次の地域。
a 公海(インド洋(ペルシャ湾を含む。以下同じ。)およびわが国の領域とインド洋との間の航行に際して通過する海域に限る。)およびその上空
b 外国(インド洋またはその沿岸に所在する国およびわが国の領域とこれらの国との間の航行に際して寄港する地が所在する国に限る。)の領域(当該外国の同意がある場合に限る。)
エ 内閣総理大臣は、補給支援活動の実施にあたり、実施計画に基づいて、内閣を代表して行政各部を指揮監督する。
オ 関係行政機関の長は、補給支援活動の実施に関し、防衛大臣に協力するものとする。

(3)実施計画
ア 内閣総理大臣は、あらかじめ、補給支援活動に関する実施計画(以下「実施計画」という。)の案につき閣議の決定を求めなければならない。
イ 実施計画に定める事項は、次のとおりとする。
(ア)補給支援活動の実施に関する基本方針
(イ)補給支援活動を実施する区域の指定に関する事項
(ウ)補給支援活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊などの規模および構成並びに装備並びに派遣期間
(エ)自衛隊がその事務または事業の用に供しまたは供していた物品以外の物品を調達して諸外国の軍隊などに譲与する場合には、その実施にかかわる重要事項
(オ)補給支援活動の実施のための関係行政機関の連絡調整に関する事項
(カ)その他補給支援活動の実施に関する重要事項

(4)国会との関係
ア 国会報告
 内閣総理大臣は、次に掲げる事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
(ア)実施計画の決定または変更があったときは、その内容
(イ)補給支援活動が終了したときは、その結果
イ 国会承認
 本法律においては、1)活動の種類および内容を補給のみに限定、2)派遣先の外国の範囲を含む実施区域の範囲についても法定した結果、補給支援特措法が国会審議を経て可決・成立すれば、その活動の実施に当たり重ねて国会承認を求めるまでの必要はないと考えられたため、国会承認にかかわる規定は置かれていない。

(5)武器の使用
ア 補給支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊などの自衛官は、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員もしくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命または身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、武器を使用することができる。
イ 武器の使用は、現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。ただし、生命または身体に対する侵害または危難が切迫し、その命令を受けるいとまがないときは、この限りでない。
ウ 当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命もしくは身体に対する危険または事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項および次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。
エ 武器の使用に際しては、刑法の正当防衛、緊急避難に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

(6)期限
 施行の日から1年を経過した日に、その効力を失う。ただし、1年以内の期間を定めて延長することができる。
(図表III-3-1-6 参照)
 
図表III-3-1-6 テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画の概要と補給支援特措法に基づく対応措置に関する実施計画の概要

参照> 資料48


 
4)昨年9月19日に採択された国際治安支援部隊(ISAF)を本年10月13日まで延長することを主な内容とする安保理決議。この決議において、「不朽の自由作戦」(OEF)への各国の貢献に対する評価が表明された。

 
5)テロ対策海上阻止活動とは、諸外国の軍隊などが行っているテロ攻撃による脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動のうち、テロリスト、武器などの移動を国際的協調の下に阻止しおよび抑止するためインド洋上を航行する船舶に対して検査、確認その他の必要な措置を執る活動をいう。

 
6)テロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するため、自衛隊がテロ対策海上阻止活動にかかわる任務に従事する諸外国の軍隊などの艦船に対して実施する自衛隊に属する物品および役務の提供(艦船もしくは艦船に搭載する回転翼航空機の燃料油の給油または給水を内容とするものに限る。)にかかわる活動をいう。

 
7)戦闘行為とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為をいう。


 

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