第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 国防政策


 インドは、国家安全保障政策として、国益を守るための軍事力および最小限の核抑止力の保持、テロおよび低強度紛争から通常戦争および核戦争までの多様な脅威への対処、テロや大量破壊兵器などの新たな脅威に対処するための国際協力の強化などをあげている。
 核政策については、インドは、最低限の信頼性ある核抑止力と核の先制不使用政策を維持し、98(平成10)年の核実験の直後に表明した核実験モラトリアム(一時休止)についても継続するとしている。また、03(同15)年1月に公表された核戦略において、核兵器、ミサイル関連部品、技術輸出管理の継続と核分裂性物質禁止条約の協議への参加や核兵器のない世界を目指すコミットメントの継続への言及がある一方で、生物・化学兵器による攻撃を受けた際には、核による報復の選択肢を保持する旨定められた。
 インド軍は、陸上戦力として12個軍団約110万人、海上戦力として2個艦隊約35万5,000トン、航空戦力として19個戦闘航空団などを含む作戦機約570機を有している。インドは、現在、空母1隻を保有しているが、新たに国産空母1隻の建造を進めるとともに、ロシアから、空母1隻を改修後に導入することとしている。他にも、老朽化したMiG-21戦闘機の退役に伴い、多目的戦闘機の調達を企図しており、昨年2月、アントニー印国防相は、多目的戦闘機126機を入札方式で調達する考えを表明している20
 インドは、近年、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの開発も積極的に進めている。インドは、03(同15)年9月には、中距離弾道ミサイル「アグニ2」を陸軍に実戦配備することを公表した。インドはこれまで各種の弾道ミサイル発射実験を実施してきており、本年5月にも中距離弾道ミサイル「アグニ3」の発射実験に成功したと伝えられている。さらに、長距離弾道ミサイル「アグニ4」の開発に着手したとも伝えられている21
 また、インドは、自国への脅威に対する防衛的対抗手段として弾道ミサイル防衛の実用化にも励んでおり、昨年12月には、弾道ミサイル迎撃実験が実施され、成功したと発表している22
(図表I-2-6-1参照)
 
図表I-2-6-1 インド・パキスタンの兵力状況(概数)


 
20)アントニー国防相は、多目的戦闘機の調達について、共同開発などを通じた技術の導入を契約の条件に挙げている。

 
21)昨年12月、インド国防省の国防研究開発機構(DRDO:Defense Research & Development Organization)ミサイル管理責任者のサラスワット氏は、「『アグニ4』は未だ構想段階であり、データを公表できる段階にない」と発言している。

 
22)昨年12月、インドは、東部オリッサ州のベンガル湾沿岸で、迎撃ミサイルによる弾道ミサイル撃墜実験を行い、成功したと発表した。なお、同種の実験は、06(平成18)年にも実施され成功を収めたとしている。


 

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