第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 NATOとの関係


 ロシアは、旧ソ連諸国と中東欧諸国のNATOへの新規加盟については、原則として、反対姿勢を維持してきている。
 9.11テロ後は、NATOとの新たな協力関係を構築しようとする動きを見せ、NATO・ロシア理事会(NRC:NATO-Russia Council)の枠組みで、ロシアは、一定の意思決定に参加し、共通の関心分野において対等なパートナーとして行動している8。一方で、グルジアとモルドバからロシア軍が撤退しないことなどを理由として、NATO諸国が欧州通常戦力(CFE:Conventional Armed Forces in Europe)適合条約9を批准していないことに対し、ロシアは不満を抱いているとみられる。こうした中、ロシアによるCFE条約の履行停止についてNRCの場などで協議が行われていたが、昨年12月、ロシアはCFE条約の履行停止を行い、同条約に基づく査察などが停止された。今後、NATO・ロシア間で、いかなる協議が行われるかに注目が集まっている10


 
8)共通の関心分野として、1)テロとの闘い、2)危機管理、3)大量破壊兵器とその運搬手段の不拡散、4)軍備管理・信頼醸成措置、5)戦域ミサイル防衛、6)海洋における捜索・救助、7)軍相互の協力および防衛改革、8)民間緊急事態への対応、9)新たな脅威と課題の9項目が示されている。

 
9)99(平成11)年の欧州安全保障協力機構(OSCE)イスタンブール首脳会議において、ブロック別保有上限の国別・領域別保有制限への変更、透明性・予測可能性の確保、信頼醸成および検証措置、CFE適合条約発効までの現行CFE条約の遵守などが合意された。現時点では、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの4か国のみが批准しており、CFE適合条約は未発効。

 
10)欧州との関係として、本年2月、コソボ自治州が独立宣言を行ったことに対し、ロシアは、セルビア共和国の主張を支持することを表明し、コソボ独立には反対の立場を示している。


 

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