第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 米国との関係


 米国との関係は、テロとの闘いにおける協力などを通じて、さまざまな分野において進展したが6、米国は主としてロシアの内政の動向に7、ロシアは米国の対外政策にそれぞれ懸念を表明しており、ロシアは、次世代の兵器開発に多額の資金を投じ、東欧諸国に軍を展開する米国への対抗策が必要な状況に立たされているとしている。
 弾道ミサイル防衛(MD:Missile Defense)を推進する米国による02(平成14)年6月の対弾道ミサイル・システム制限(ABM:Anti-Ballistic Missile)条約からの脱退に対し、ロシアは、米国のABM条約脱退の決定は誤りであるとはしたものの、ロシアの安全保障上の脅威とはならないと受け止めてきた。しかし、米国のMDシステムの一部をチェコおよびポーランドに配備するための本格的交渉の開始が合意されたことに対し、このシステムがロシアに向けられたものであり、自国の核抑止能力に否定的影響を与え得るとしてロシアは強く反発している。


 
6)たとえば、信頼醸成措置から始まった両国の軍事面における協力関係は、実際の共同行動をも念頭に置いた段階に発展しつつある。04(平成16)年から在欧米陸軍とロシア地上軍の間で指揮所演習「トルガウ2004」(05(同17)年、「トルガウ2005」も実施)が開始され、昨年は実動訓練を伴う「トルガウ2007」が行われた。

 
7)米国は、06(平成18)年2月に公表された「四年毎の国防計画の見直し(QDR:Quadrennial Defense Review)」において「米国は、ロシアにおける民主主義の衰退、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)や報道の自由の抑制、政治権力の中央集権化、経済的自由の制限に依然として懸念を抱いている」としている。


 

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