第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 対外関係


1 独立国家共同体(CIS)との関係


 ロシアは、自国の死活的利益がCISの領内に集中しているとし、ウクライナ、グルジア、モルドバ、アルメニア、タジキスタンとキルギスにロシア軍を駐留させるとともに、CIS諸国との間で共同防空システム創設協定や国境共同警備条約を結ぶなど、軍事的統合を進めてきた1
(図表I-2-4-2 参照)
 
図表I-2-4-2 CIS加盟諸国

 中央アジア・コーカサス地域においては、イスラム武装勢力の活動の活発化に伴い、テロ対策を中心とした軍事協力を進め、01(平成13)年5月、CISの集団安全保障条約機構の枠組みにおいて合同緊急展開部隊を創設2した。9.11テロ発生後、米国などのアフガニスタンへの軍事行動が開始されると、ロシアは、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、グルジアにおける米軍などの駐留や援助を容認する一方3、03(同15)年にはCISの合同緊急展開部隊を強化するため、キルギス領内に空軍基地を開設した4。また、ロシアは、タジキスタンにも1個師団(約8,000人)を駐留させていたが、04(同16)年10月にはタジキスタンと協定を締結し、同国内にロシア軍基地を確保した。
 一方、グルジアおよびウクライナは、欧米との関係強化を目指し、将来的なNATOへの加盟の意思を表明している。グルジアでは、昨年11月、同国内に所在しているロシア軍基地が閉鎖され、ロシア軍は撤退した5。また、ウクライナでロシア黒海艦隊の駐留が継続された場合、これは、同国のNATO加盟の障害となり得る。


 
1)CIS諸国の一部には、ロシアとの距離を置こうとする動きも見られ、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバで形成する地域組織GUAM(これらの国々の頭文字)は、安全保障や経済面でロシアへの依存度低下を目指し、欧米志向の政策をとっている。(ウズベキスタンは、CISの集団安全保障条約機構脱退後の99(平成11)年にGUAMに加盟したが、05(同17)年脱退した。

 
2)01(平成13)年8月、ロシア、カザフスタン、キルギスおよびタジキスタンの4か国からそれぞれ1個部隊(大隊以下級の部隊)の提供を受け、約1,000〜1,300名規模で編成された。司令部は、キルギスの首都ビシケク。04(同16)年5月には、新たにタジキスタンから2個部隊、ロシア、カザフスタンからそれぞれ1個部隊が追加され、全部で9個大隊、4,500名の規模にまで拡大された。

 
3)05(平成17)年11月、米軍はウズベキスタンから撤退した。

 
4)このカント空軍基地の近くには、米国などが対テロ作戦に使用しているマナス基地がある。

 
5)ロシア軍を中心とするCIS平和維持部隊がグルジア内のアブハジアに、ロシア、グルジア、南オセチア軍で構成される合同平和維持部隊が南オセチアに展開している。


 

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