第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

第4節 ロシア


1 全般


 ロシアでは、「強い国家」こそが秩序と安定をもたらすとするプーチン前政権の政策が国民に支持され、昨年12月、候補者名簿の第1位をプーチン大統領(当時)とする与党「統一ロシア」が、ロシア国家院(下院)議席の3分の2以上1を獲得し、圧勝した。
 本年2月、プーチン大統領(当時)は「2020年までのロシアの発展戦略」とする演説を行い、20(平成32)年までの長期的展望に立ったビジョンを披露している。そこでは、プーチン前政権の下で、90年代の危機的状況から脱却し、「強い国家」として国際社会への復帰を果たしたと評価している。今後は、質的に新しい発展戦略の下で、エネルギー資源部門への依存から脱却した社会・経済改革を目指すとしている。
 また、安全保障に関しては、ロシアの意図せざる軍備競争が始まり、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)の軍事施設がロシア国境に近づいているために米国・NATOへの対抗策が必要な状況が生じているとし、ロシアの好調な経済2を背景に、過度な軍備競争を避けつつ、国力に応じた軍事力の近代化を推進する必要性について言及している。
 本年5月に就任したメドベージェフ大統領3は、プーチン前大統領を政策執行を担当する首相に任命し、プーチン前政権の政策を基本的に継承していく旨表明している。


 
1)与党「統一ロシア」は、ロシア下院全議席(450議席)中、70%にあたる315議席を獲得した。本年5月、プーチン氏は「統一ロシア」の党首に就任している。

 
2)昨年の経済成長率は8.1%であった。

 
3)本年3月2日のロシア大統領選挙で、メドベージェフ氏は投票数の70%を超える得票で当選した。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む