第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 国防費


 中国は、2008年度の国防予算を約4,099億元、前年度比17.7%の増加と発表した。中国の公表する国防費は、当初予算比で20年連続の二桁の伸び率を達成したが、この公表国防費の増額のペースは、5年毎におよそ倍額となるペースであり、過去20年間で中国の公表国防費は、名目上19倍の規模となった6。中国は、国防と経済の関係について、「2006年の中国の国防」白書において、「国防建設と経済建設を協調的に発展させる方針に従う」と説明し、国防建設を経済建設と並ぶ重要課題と位置付けている。このため、中国は経済建設に支障の無い範囲で国防力の向上のための資源投入を継続していくものと考えられ、引き続き軍事力の近代化が推進されていくものと考えられる。
(図表I-2-3-3参照)
 
図表I-2-3-3 中国の公表国防費の推移

 また、中国が国防費として公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられていること7に留意する必要がある。たとえば、装備購入費や研究開発費などはすべてが公表国防費に含まれているわけではないとみられている。


 
6)中国の発表した国防費伸び率は昨年度執行額と今年度当初予算を比較した伸び率であり、昨年度当初予算と今年度当初予算を比較すると約18.0%の伸び率となっている。外国の国防費を単純に外国為替相場のレートを適用して他の通貨に換算することは、必ずしもその国の物価水準に照らした価値を正確に反映するものではないが、仮に本年度の中国の国防予算を1元=15円で換算すると約6兆1,491億円となる。

 
7)米国防省「中華人民共和国の軍事力に関する年次報告」(本年3月)は、中国の国防費について、07年度の公表国防費は約459.9億ドルであるが、実際の国防費は970億ドルから1,390億ドルである可能性があると見積っており、戦略部隊(核・ミサイル)、海外からの兵器調達、軍事関連の研究開発、準軍隊の費用が公表国防費に含まれていないと指摘している。


 

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