第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 台湾との関係


 中国は、台湾は中国の一部であり、台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しており、「一つの中国」の原則が、中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。また、中国は、平和的な統一を目指す努力は決して放棄しないとし、台湾人民が関心を寄せている問題を解決し、その正当な権限を守る政策や措置をとっていく旨を表明する一方で、外国勢力による中国統一への干渉や台湾独立を狙う動きに強く反対する立場から、武力行使を放棄していないことをたびたび表明している。05(平成17)年3月に制定された「反国家分裂法」においては、台湾が中国から分裂することを招く重大な事態が生じたときなどには、非平和的な方式による措置を講ずると規定されており、武力行使の不放棄が明文化されている。
 00(同12)年に就任した台湾の陳水扁(ちん・すいへん)総統(当時)(民進党)は、各種の団体などの名称を「台湾」に改める「正名運動」や「台湾」名義による国連加盟のための住民投票を主張するなど「台湾独立」志向の強い行動をとったため、中国は激しく反発していた。これに対して、本年3月の総統選挙で当選した馬英九(ば・えいきゅう)総統(国民党)は、中国との経済交流の拡大による台湾経済の発展や、独立よりも現状維持を追求する政策を掲げている。5月には、呉伯雄(ご・はくゆう)国民党主席が北京を訪問して胡錦濤総書記と会談し、両者は中台の対話を早期に再開することで合意しており、今後の中台関係の動向が注目される。

 

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