第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)立入検査課程(海自)の教官の声

海上自衛隊第1術科学校警備科(立入検査班長)3等海佐 奥村徹也
 
船舶型教材で乗船実習中の立入検査課程学生(手前)と船員役の教官(奥)

 私は、海上自衛隊第1術科学校で立入検査班長として、立入検査課程を受け持っている教官です。立入検査課程は、平成11年の能登半島沖の不審船事案を契機に平成13年度に新設された比較的新しい教育課程です。
 さて、一口に「立入検査課程」と言っても、海上自衛隊が船舶に対して実施する検査活動は、その根拠とする法律に基づき、大きく三つに分類されます。まず、船舶検査活動法に基づき実施する、乗船しての「検査」、次に、海上における警備行動時に海上保安庁法を準用して実施する「立入検査」、最後に、防衛出動時に外国軍用品等海上輸送規制法に基づき実施する「停船検査」です。立入検査課程では、これらの検査活動において、護衛艦などから隊員を派遣し、対象船舶に乗船して積荷、船舶書類、船内区画の検査などを実施するための教育を実施しています。しかし、各種法律に基づく権限の違いが複雑であり、学生にこの違いを確実に覚えさせるために、日々苦慮しています。
 また、海上自衛官の教育は、通常、機器操法や事務手続の教育が中心であり、主として機械や書類相手のものが多いのですが、当課程では検査活動のための人対人の対応要領に関する教育が中心になります。特に、船上で相手が危険な行為に及ぶことも考えられるため、危険を伴う拳銃、警棒などの操作要領は、根拠となる法律に基づき、適時適切に操作できるよう、頭で理解したことを体で覚える教育に重点をおいています。学生に完璧に実技を修得させるため、教官は教務時間に限らず、夜間の自習時間や休日においても、学生からの指導要請に対応できるよう学生と共に過ごしています。
 このように、教官が学生と常に一緒にいることで、約4週間という限られた期間内での能力向上を図るとともに、課程全体に「教えられるが故に学ぶ」という姿勢ではなく「学ばんと欲するが故に教えを乞う」という積極的な雰囲気を醸成しています。
 終わりに、昨今の国際情勢から、海上自衛隊による船舶に対する検査活動などの実施の可能性は常に存在すると考えられますが、我々教官は、いついかなる時でも、立入検査などの任務を完遂できる精強な隊員の教育に尽力しているところです。

 

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