第III部 わが国の防衛のための諸施策 

2 自衛隊の訓練

(1)各自衛隊の訓練
 各自衛隊の部隊などで行う訓練は、隊員それぞれの職務の練度向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な行動を練成することを目的とした部隊の訓練とに大別される。
 隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練は、小部隊から、大部隊へと規模を拡大しつつ訓練を積み重ねながら、部隊間での連携など総合的な能力の発揮を目標とした大規模な総合訓練も行っている。
(図表III-4-1-6参照)
 
図表III-4-1-6 各自衛隊の主要演習実績(平成18年度)

 また、このようなわが国の防衛のための訓練に加え、近年、周辺事態への対応、不審船や武装工作員などによる事態への対処、大規模テロのおそれがある場合の自衛隊の施設の警護、他省庁や地方公共団体などとの共同訓練など、自衛隊の任務の多様化に対応した訓練の充実にも努めている。
(図表III-4-1-7参照)
 
図表III-4-1-7 警察・海上保安庁との共同訓練実績(平成18年度)

参照>1章2節

(2)統合訓練

 わが国への武力攻撃などが発生した場合に、自衛隊が、その能力を最も効果的に発揮するためには、平素からの、陸・海・空自衛隊の統合訓練が重要である。このため自衛隊は、従来から二以上の自衛隊が協同する統合訓練を行ってきたが、昨年3月の統合運用体制への移行にともない、統合訓練をさらに充実・強化している。
 たとえば、わが国への直接の脅威を防止・排除するための演習である自衛隊統合演習、日米共同統合演習、弾道ミサイル対処訓練などのほか、国際平和協力活動などを想定した国際平和協力演習、統合国際人道業務訓練などがある。
(図表III-4-1-8参照)
 
図表III-4-1-8 統合演習の実績(平成18年度)

(3)教育訓練の制約と対応

 自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境下で行うよう努めており、さまざまな施設・設備5を有しているが、制約も多い。
 特に、訓練を行う演習場や海・空域、射場などが、必ずしも十分な広さとはいえないこと、地域的に偏っていること、使用できる時期に制限があることなどの制約6は、装備の近代化などに伴い、ますます拡大する傾向にある。また、実戦的な訓練の一つとして実施する電子戦7環境下での訓練についても、電波干渉の防止の観点から制約がある。
 各自衛隊は、こうした制約に対応するため、大規模な演習場まで移動して訓練を行うなど、限られた国内演習場などを最大限に活用しているほか、国内では得られない訓練環境を確保できる米国およびその周辺海域において、実射訓練や日米共同訓練を行うことなどを通じて、より実戦的な訓練を行うよう努めている。
(図表III-4-1-9参照)
 
図表III-4-1-9 各自衛隊の米国派遣による射撃訓練などの実績(平成18年度)
 
陸自中SAMの米国における年次射撃

(4)安全管理

 自衛隊の任務が、わが国の防衛などであることから、その訓練や行動に危険が伴うことは避けられない。しかし、国民の生命や財産に被害を与えたり、隊員の生命を失うことなどにつながる各種の事故は、絶対に避けなければならない。
 安全管理は、不断の見直し、改善が不可欠であり、防衛省・自衛隊が一丸となって取り組むべき重要な課題である。防衛省・自衛隊では、今後も、平素からの航空機の運航や射撃訓練時などにおける安全確保に最大限留意するとともに、海難防止や救難のための装備、航空保安無線施設の整備なども進めていくこととしている。


 
5)たとえば、陸上自衛隊では、連隊・師団レベルの指揮・幕僚活動を演練するための指揮所訓練センター、中隊レベルなどの訓練を行うための富士訓練センターや市街地訓練場などである。
 
6)たとえば、戦車、対戦車ヘリコプター、ミサイル、長射程の火砲、地対空誘導弾(改良ホークやペトリオット)、地対艦誘導弾、魚雷などの射撃訓練については、国内の射場が限られていたり、射程が長く国内では射撃ができないものがある。また、広大な訓練場を要する大部隊の演習、比較的浅い海域で行う掃海訓練や潜水艦救難訓練、早朝や夜間の飛行訓練などにも、さまざまな制約がある。
 
7)敵の電磁波を探知し、これを逆用し、あるいは、その使用効果を低下させ、または無効にするとともに、味方の電磁波の利用を確保する活動のこと。

 

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