第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)インド洋における協力支援活動に連絡官として従事した隊員の声

海上自衛隊 2等海佐 前田嘉則(まえだよしのり)(現所属:防衛研究所)
 
パキスタン海軍艦艇で、連絡調整業務にあたる前田2佐(右)

 ペルシャ湾中西部に浮かぶ奄美大島とほぼ同じ大きさの島国、イスラム教国バーレーンにある米海軍第5艦隊司令部が海上自衛隊バーレーン連絡官の勤務場所です。連絡官が勤務するF2C2(Friendly Forces Coordination Center:連合国作戦調整所)には15か国から連絡官が派出され、テロ撲滅のための海上阻止活動(OEF-MIO)に関する情報交換や作戦調整を実施しています。テロ撲滅作戦に従事する各国艦艇が効率的にOEF-MIOを実施するために海自補給艦による継続した燃料補給は不可欠です。米海軍第5艦隊司令部は、米国以外の各国艦艇が使用する燃料の40%を提供する海自の協力支援活動を「国際テロリストがテロ活動あるいはテロを支援する場所としての海洋環境利用を抑止するため各国艦艇部隊が実施する海上阻止作戦への貢献は極めて大きい」と高く評価しています。私は平成18年2月から14か月間、連絡官として勤務しましたが、その間、約160回の協力支援活動(洋上補給)の調整を行いました。調整の相手は、米海軍後方部隊とOEF-MIOに艦艇を派出している英国、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、カナダ、パキスタンなどの連絡官です。広いインド洋を行動する海自補給艦と各国海軍艦艇が調整どおりに洋上で会合し、洋上給油を無事終えた時、各国連絡官から日本の支援に対して「ありがとう」と笑顔で答えてくれるのが、気温45度を越えるアラブの地での厳しい調整業務を支えてくれます。各国連絡官と、海自の協力支援活動についてより良い方向を話し合うのも任務の一つです。パキスタンはイスラム国家として初めてOEF-MIOに参加し、継続的に艦艇と航空機を派出しています。パキスタンからはイムティアズ海軍少佐が連絡官として派出され、一緒にF2C2で勤務した友人です。パキスタンは英国で建造されたガスタービン艦を6隻保有し、北アラビア海に交代で派出しテロ撲滅作戦に参加しています。彼は、私の帰国直前のF2C2ミィーティングで海自の支援に感謝を表明するとともに昨年4月から8月にかけてOEF-MIOの指揮をとったパキスタン海軍イクバル少将からの「日本のパキスタン海軍への艦艇用燃料、航空用燃料、乗員の生活を維持する真水(飲料水)の補給に感謝する。パキスタン軍艦はガスタービンエンジンを運転するために高品質の艦艇用燃料が必要であり、ほぼ100%を海自補給艦に依存している。パキスタンが国家としてOEF-MIOに参加できるのは日本の継続した支援があるためと言って過言ではない。」とのメッセージを各国連絡官に伝えました。バーレーン連絡官の任務は厳しい環境下、洋上で行動する海自部隊の協力支援活動を間違いなく実施するための「縁の下の力持ち」的存在ですが、わが国の支援活動が円滑に実施されていることを各国連絡官から確認し、それを洋上で汗を流している艦艇乗員に伝えることが最大の喜びでもあります。

 

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