第III部 わが国の防衛のための諸施策 

4 横田飛行場および空域

(1)共同統合運用調整所の設置

 司令部間の連携向上は、日米両部隊間の柔軟かつ即応性のある対応の観点から極めて重要である。横田飛行場(東京都)に所在する在日米軍司令部は、「指針」の下の各種メカニズム5においても、重要な位置を占める。また、自衛隊が新たな統合運用体制に移行するとともに、米軍においても統合の強化などの変化が、近年生起している。
 これらを踏まえ、後述の空自航空総隊司令部の移転にあわせ、共同統合運用調整所を設置することとした。この調整所は、防空およびBMDに関し、日米の司令部組織間での緊密な調整や相互運用性の向上を図るとともに、統合幕僚監部と在日米軍司令部との間の情報の共有を図ることなどを通じ、日本の防衛のための共同対処に資する機能を果たすものである。

(2)空自航空総隊司令部の移転

 府中(東京都)に所在する空自航空総隊司令部は、わが国の防空を任務とするほか、今後BMDにおける司令部機能も保持する予定である。防空およびBMDにおいては、対処可能時間が短いため、特に日米間で必要な情報を迅速に共有する意義が大きい。そのため、同司令部を関連部隊とともに、10(平成22)年度を目標に、米第5空軍司令部の所在する横田飛行場に移転することとしている。これにより、前述の共同統合運用調整所の設置とあわせて、防空およびBMDにおける情報共有をはじめとする司令部組織間の連携を強化する。

(3)横田空域
 米軍は、横田飛行場において、首都圏西部から新潟に広がる横田空域の進入管制を行っているが、当該空域の避航を余儀なくされる民間航空機の運航を円滑化するため、次の措置が追求される。
ア 空域通過の手続きに関する情報提供プログラムを06(同18)年度に立ち上げ
イ 空域の一部について、軍事上の目的に必要でないときに管制業務の責任を一時的に日本側当局に移管する手続きを06(同18)年度に作成
ウ 空域の一部について、返還空域を06(同18)年10月までに特定の上、08(同20)年9月までに管制業務を日本に返還
エ 横田空域全体のあり得べき返還に必要な条件の検討6を09(同21)年度に完了
 これを受けて、昨年9月より上記イの措置が開始されるともに、同年10月には、1)08(同20)年9月までに日本側に返還される空域の特定、2)横田ラプコン(RAPCON:Radar Approach Control)施設への自衛隊管制官の併置について、日米合同委員会の下の民間航空分科委員会で協議され、日米合同委員会の承認を経て日米両政府で合意に達した。上記1)の措置が実施されれば、横田空域のうち、羽田空港西側に隣接する部分は約40%が削減されることとなる。また、本年5月から、上記2)について、空自管制官の併置が開始されたところである。
 なお、管制官併置の経験から得られる教訓は、横田空域全体のあり得べき返還に必要な条件の検討に際し考慮される。
(図表III-2-2-12参照)
 
図表III-2-2-12 横田空域

(4)横田軍民共用化

 横田飛行場の軍民共用化については、03(同15)年5月の日米首脳会談において、その実現可能性について、日米両国政府共同で検討していくこととなった。これを受け、政府関係省庁(内閣官房、外務省、国土交通省、防衛庁(当時)、防衛施設庁)と東京都との実務的な協議の場として「連絡会」を設置し、累次議論が行われてきた。
 本件について、日米両国政府は、横田飛行場のあり得べき軍民共用化の具体的な条件や態様に関する検討を実施し、開始から12か月以内に終了することとなっている。この検討は、昨年10月から開始されたところであるが、共用化により横田飛行場の軍事上の運用や安全などを損なわないとの認識の下に行われる。日米両国政府は、検討の結果に基づき協議し、その上で軍民共用化に関する適切な決定を行う。


 
5)3節2参照
 
6)この検討は、日本における空域の使用に関する民間および軍事上の将来のあり方を満たすような、関連空域の再編成や航空管制手続の変更のための選択肢を包括的に検討する一環として行われる。

 

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