第III部 わが国の防衛のための諸施策 

5 厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐

(1)米空母展開の意義

 米国の太平洋艦隊のプレゼンスは、アジア太平洋地域における海上交通の安全を含む地域の平和と安定にとり、重要な役割を果たしている。米空母は、その能力の中核となる役割を果たしており、現在米空母キティホークが、この地域に展開し、横須賀(神奈川県)にも寄港してきた。空母およびその艦載機の長期にわたる前方展開能力を確保するため、わが国においてその拠点が確保される必要がある。
 なお、05(平成17)年10月、米海軍は、08(同20)年に空母キティホークが退役し、原子力空母と交替することを発表し、その後、原子力空母ジョージ・ワシントンを後継艦とすることを決定、公表した。この原子力空母への交替に当たり、昨年6月、原子力空母の安全な運用を確保するため、日本政府が横須賀海軍施設の提供水域内における浚渫(しゅんせつ)工事を実施することについて、日米間で合意された。
 これを受け、防衛施設庁は、昨年度内に調査・設計を終えるとともに、本年4月には港湾管理者である横須賀市との間での港湾協議を了し、浚渫工事を進めることとしており、来年5月までに完了させる予定である。

(2)空母艦載機の拠点

 空母艦載機については、空母の横須賀展開時の拠点として、厚木飛行場(神奈川県)が現在利用されているが、厚木飛行場は市街地の中心に位置し、特に空母艦載ジェット機の離発着に伴う騒音が、長年にわたり問題となっていた。
 今後、日米安保体制とその下での空母の運用を安定的に維持していくためには、これらの問題を早期に解決することが必要である。
 また、岩国飛行場については、滑走路移設事業終了後には、周辺地域の生活環境への影響がより少ない形で、安全な航空機の運用が可能となる。
 これらを考慮し、第5空母航空団は、厚木飛行場から岩国飛行場に移駐することとした。この移駐は、F/A-18、EA-6B、E-2CおよびC-2機(計59機)から構成され、1)必要な施設が完成し、2)訓練空域および岩国レーダー進入管制空域の調整が行われた後、14(同26)年までに完了する。
 この移駐に伴い、米軍の運用の増大による影響を緩和するため、移駐が滑走路の沖合移設後に行われることに加え、岩国飛行場の海自EP-3機などの厚木移駐、普天間飛行場から岩国飛行場に移駐するKC-130機の海自鹿屋基地およびグアムへの定期的なローテーションでの展開、岩国飛行場の海兵隊CH-53Dヘリのグアム移転などの関連措置がとられる。
 これらにより、岩国飛行場周辺の騒音は、住宅防音の対象となる第一種区域の面積が、現状の約1,600haから約500haに減少するなど、現状より軽減されると予測される。また、滑走路の沖合移設により、離着陸経路が海上に設定されることとなり、安全性も今以上に確保される。
図表III-2-2-8参照)

 空母艦載機着陸訓練については、恒常的な空母艦載機着陸訓練施設について検討を行うための二国間の枠組みを設け、恒常的な施設を09(同21)年7月またはその後のできるだけ早い時期に選定することを目標とする。なお、「共同文書」においては、空母艦載機着陸訓練のための恒常的な訓練施設が特定されるまでの間、現在の暫定的な措置に従い、米国は引き続き硫黄島で空母艦載機着陸訓練を実施する旨確認された。

(3)岩国飛行場民間空港再開

 山口県や岩国市などの地元地方公共団体などが一体となって民間空港再開を要望していることにかんがみ、同飛行場の民間空港再開と米軍の運用との関連などについて問題点などを整理し、その可能性を検討するため、日米合同委員会の枠組みを活用して協議を行ってきた。その結果、05(平成17)年10月、同委員会において、米軍の運用上の所要を損なわない限りにおいて、1日4往復の民間航空機の運航を認めることについて合意された。
 その後、在日米軍再編に関する協議の中で取り扱われ、昨年5月の「ロードマップ」において「将来の民間航空施設の一部が岩国飛行場に設けられる」とされたことから、以後、民間空港施設の位置などについて、在日米軍再編を前提に日米間で協議を進めているところである。

 

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