第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)災害派遣(北陸風水害)に従事した隊員の声

航空自衛隊 中部航空警戒管制団 第35警戒隊 3等空曹 長田平和(おさだひろかず)
 
救助活動を行う長田3等空曹(右端)

 昨年7月、日本海側を襲った集中豪雨により大規模な土砂災害が発生、民家を直撃し2名の方がその生き埋めとなりました。現場は、山の斜面を切り開いた公園墓地であり、崩れた土砂に多くの墓石が混在したことや、粘土状の地質の土が雨水を大量に含んだ状態であったこと、生き埋めとなった2名が家のどの位置にいたか特定できないという状況の中、救助活動は大変困難を極めました。
 私が所属する第35警戒隊は、京都府知事からの災害派遣要請に基づき、現地派遣隊員として3個の分隊を編成(約45名)し、現場到着後、生き埋めとなった方の捜索・救助の任務に就きました。これまで経験したことのない緊迫した空気の中、速やかに多くの情報等を入手し、現場指揮官の指揮下で救助活動に入りました。
 救助活動中は不安や心配よりも、ただ、「一刻も早く、助け出したい。」という思いしかありませんでした。潰れた家の合間から、手作業で壊れた家屋の破片を一つ一つ取り除き、やっとの思いで救助者を発見、それから救出までの全ての活動に携わり、私にとって初の実動任務を終えました。
 今回の災害派遣では、国民の生命財産を守り、国民の負託に応えるという自衛官の使命を改めて認識し、「使命」を自覚することが如何に重要なことか、考えさせられる貴重な経験となりました。
 私の部隊は、防空レーダーを使用した日本海側の警戒監視が任務です。レーダーの画面を見て、領空侵犯の可能性のある航空機を24時間監視することが主な任務ですが、今回の災害派遣とは、活動の内容は違っても、達成する「日本を守る」目的は同じだと思います。私は、趣味のマラソンや筋力トレーニングを通じ日々、気力と体力の練成に努めていますが、空の警戒監視を実施することから今回のような災害派遣に至るまで、任務遂行の際に最も必要となるのは、隊員一人ひとりの持つ精神力、体力のみならず、「日本を守る」という「使命」感が重要であることが理解できました。
 今回の災害派遣で得た経験は、今後どのような困難な任務でも完遂できる強い精神力を得ることができました。この経験を今後の訓練に活かし、多様な任務に即応できるよう、訓練を積んでいきたいと思います。

 

前の項目に戻る     次の項目に進む