第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)災害派遣(呉・江田島給水支援)に従事した隊員の声(陸自・海自)

陸上自衛隊 第13対戦車中隊 3等陸曹 松井広治(まついひろはる)
 
広島県江田島市柿浦港埋立地において給水活動を行う陸自部隊

 昨年8月私は、テレビで呉市・江田島市地区へ水道及び工業用水を供給するための送水トンネルが崩落し、同地区が断水になったことを知りました。
 自衛隊に入隊して9年、災害派遣に参加したことのなかった私は、強く希望して同地に対する災害派遣(給水支援活動)に参加しました。純粋に被災地域で困っている方々の役に立ちたいとの思いからでした。
 呉市に入ると、道路脇で手を振る子供や手を叩いて喜ぶ住民の皆さん、また中には手を合わせて拝むお婆さんがとても印象的でした。
 車を駐車場に止めて降りると、すでに水を求める人々の列ができており、1トンしか入らない水トレーラは、あっという間に空っぽ。補水ポイントで水を入れては再び給水活動といった作業を繰り返す毎日でしたが、水を求めて集まってくる地域の方々の笑顔、そして「ありがとう」の言葉にとても力付けられました。
 24時間態勢での給水支援任務を達成できたのも、日頃の訓練と補水ポイントで支援して頂いた地域の方々の協力があったからだと思います。一週間の災害派遣でしたが、人と人との繋がりの大切さを知る上で貴重な経験を得た災害派遣でした。

海上自衛隊 呉警備隊港務隊 3等海尉 中下淳治
 
桟橋に横付けし、給水支援中の海自呉警備隊の水船

 広島県呉市に所在する海自呉警備隊は、昨年8月、広島県呉市・江田島市の水道送水施設の事故に際し、同県からの要請により、災害派遣(給水支援)を行いました。この時、私は水船(水を輸送するための船)2隻の指揮官として、江田島市への給水支援に従事しました。
 桟橋に横付けした水船から、浄水場に給水を行うこととなりましたが、浄水場は船から約500m先にあり、消防車のポンプを介した送水が必要でした。初日の活動は、消防署員も我々も互いに初めての共同作業であり、6時間の活動で約250トンの給水支援となりました。
 初日の教訓から、「何事も綿密な調整が必要なんだな」と思い、翌日は積極的に現場の消防署員と調整し、ホースの本数を増やしたり、送水能力の高いポンプ車を配備してもらうなど、試行錯誤の結果、2隻の水船で約1,000トンの給水を行うことができました。「よし、これでいけるぞ」と安堵しましたが、江田島市の住民のご苦労を思うと、できるだけ多くの水を運びたいという気持ちを、派遣に関わった隊員全員が強く感じていました。
 消防署や水道局という、普段、海上自衛隊と接点の少ない団体と一致団結して、江田島市民の皆様のために活動できたことは、我々にとって非常に貴重な経験でした。

 

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