第II部 わが国の防衛政策の基本 

2 冷戦終結後

 冷戦終結後、安全保障環境は大きく変化する。各種の事態に対応して防衛力を多様に活用する必要性が高まり、自衛隊の役割は、抑止重視の「存在する自衛隊」から、対処重視の「より機能する自衛隊」に重点を移している。
 防衛省は、「より機能する自衛隊」について、防衛政策を考え、法律案を作り、実際に動かす、政策面を重視した組織へ変化している。具体的には、以下のように任務・役割が拡大し、政策官庁としての役割が増大している。
(図表II-3-1-1参照)
 
図表II-3-1-1 拡大する防衛省・自衛隊の活動など

 これに伴い、防衛省の業務内容は、その重点が「管理」から「政策」の企画立案に移っており、防衛力の円滑かつ適切な活用のための防衛政策の企画立案機能の強化が求められるようになる。

(1)防衛省・自衛隊の任務・役割の拡大
 新たな安全保障環境の下、防衛省では、重要施策の企画立案を行うことが急激に増えている。冷戦終結後昨年末までに、有事法制の成立をはじめ、法律の制定・改正が41件、条約の締結および政府間の共同発表が12件、閣議決定が9件と、実に約60件にも及ぶ防衛に関する重要な措置が政府により講じられている。(図表II-3-1-2参照)
 
図表II-3-1-2 冷戦終結後、防衛省(庁)・自衛隊において対応した措置・活動の実績

(2)国内外における活動などの増加

ア 国内における活動
 阪神・淡路大震災、雲仙普賢岳噴火、地下鉄サリン事件、有珠山噴火、新潟県中越地震、集中豪雨など、自衛隊はさまざまな災害や不審船などに対応する活動を実施してきた。国内での災害対応については、04(平成16)年10月に発生した新潟県中越地震への災害派遣や本年3月に発生した能登半島地震への派遣など、阪神・淡路大震災以降昨年末までに約1万回の活動を実施し、のべ約275万人の隊員が従事している。
 99(同11)年の能登半島沖での不審船事案では、自衛隊創設以来初めての海上警備行動が発令され、04(同16)年の中国原子力潜水艦による領海内潜没航行事案では、二度目の海上警備行動が発令された。
 また、98(同10年)の北朝鮮による弾道ミサイル発射事案など、顕在化した弾道ミサイルの脅威に備え、弾道ミサイル防衛システムの整備を進めている。

イ 国外における活動
 92(同4)年に国際平和協力法および国際緊急援助隊の派遣に関する法律の一部を改正する法律が成立し、自衛隊をカンボジアに派遣して以来、これまでモザンビーク、ザイール、ゴラン高原、東ティモールなど世界の各地で国際平和協力活動を実施してきた。国際平和協力活動については、PKOはもとより、国際緊急援助活動や、イラク人道復興支援特措法に基づくイラク人道復興支援活動、テロ対策特措法に基づくインド洋での活動など、近年特にその任務が拡大してきており、昨年末までに約20回の活動を実施し、のべ約3万人の隊員を派遣してきている。
(図表II-3-1-3参照)
 
図表II-3-1-3 広がる自衛隊による国際平和協力活動

ウ 日米防衛協力
 冷戦終結後、96(同8)年の「日米安保共同宣言」、97(同9)年の「日米防衛協力のための指針」の策定などを通じて、日米間の防衛協力はより一層効果的なものとなり、日米安保体制の信頼性が一層向上した。また、01(同13)年9月11日に発生した米国同時多発テロ以降は、テロとの闘いなど国際的な活動における日米協力が進展している。さらに、米軍再編のための日米協議などにより、日米間の防衛協力関係は一層強化・拡大している。

参照>III部2章

エ 安全保障対話・防衛交流
 安全保障環境の改善のためには相互の信頼関係を深めることが重要との認識のもと、近年は、二国間あるいは多国間の安全保障対話・防衛交流を積極的に推進してきており、アジアの国々など18か国・機関と定期的に協議を実施している。

参照>III部3章2節

(3)防衛省・自衛隊の活動に対する支持と理解の拡大
 こうした多くの隊員たちの努力により、防衛省・自衛隊の活動は、理解と支持を得るようになってきており、昨今、国内外の防衛省・自衛隊に対する見方は、52年前の創設時とは大きく異なるものとなっている。昨年実施された内閣府による世論調査では、国民の約85%が自衛隊に対し良い印象を持っているとの結果が出ている。また、自衛隊の海外における活動は、国際社会からも期待され、評価されるようになってきている。
(図表II-3-1-4・5参照)

参照>資料61
 
図表II-3-1-4 国内外からの自衛隊の評価
 
図表II-3-1-5 自衛隊に対する評価

 

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