第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 軍改革

 ロシアでは、ソ連崩壊後の軍再編は、全般的に遅れていたが、97(平成9)年以降、兵員の削減と機構面の改革、新型装備の開発・導入を含む軍の近代化、即応態勢の立て直しなどが進められてきている。兵員については、削減はほぼ終わりに近づき、今後大きな削減は予定されていない6。機構面の改革は、3軍種3独立兵科制への移行7や軍管区の統合などが行われ、概ね完了した。軍の近代化については、昨年10月に「2007年から2015年までの装備国家綱領」が大統領により承認され、15(同27)年までの間に装備の開発・調達などに約5兆ルーブルが投じられる予定である。同時に、効率的な調達を実現すべく、統一的な発注システムを創設するための努力が行われている。一方、軍人の質的向上を図り練度の高い軍を維持するために、徴兵ではなく契約により採用を行う契約勤務制度の導入が進められており8、整備が進んでいる常時即応部隊の存在とあいまって、ロシア軍の即応態勢の向上に寄与すると考えられる。その他、ロシア軍では、部隊指揮システムの改善も進められており、これらの通常戦力の能力向上のための取組は、核兵器による戦略抑止能力を維持するための努力とともに、近年の国防予算の増加傾向を背景として9、今後も、継続されていくと考えられる。
(図表I-2-4-1参照)
 
図表I-2-4-1 ロシアの国防費の推移


 
6)05(平成17)年11月、イワノフ国防相(当時)は、05年現在の兵力数が113万4,800人で、これを11(同23)年までに110万人にすると発言した。また、昨年5月、プーチン大統領は、自然な退職という形により将来的に100万人という適正水準を目指すと発言した。
 
7)97(平成9)年の大統領令により、同年末までにABMを運用する防空軍のロケット・宇宙防衛部隊と宇宙飛翔体の打ち上げおよび管制を担当する宇宙軍を、ICBMを運用する軍種である戦略ロケット軍へ統合。しかし、02(同14)年の大統領令により、同年5月末までに、戦略ロケット軍内の(旧)ロケット・宇宙防衛部隊と(旧)宇宙軍を統合して、兵科としての(新)宇宙部隊およびICBMを運用する兵科としての(新)戦略ロケット部隊に再編。これにより、ロシア軍は、地上軍、海軍、空軍の3軍種、戦略ロケット部隊、宇宙部隊、空挺部隊の3独立兵科の体制に移行した。
 
8)本年4月、プーチン大統領は年次教書において、ロシア軍の3分の2が職業軍人となると発言した。
 
9)本年度の国防予算は、名目ベースで対前年度比約23%の増加であった。

 

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