第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 チェチェン問題

 ロシアは、99(平成11)年、チェチェン武装勢力のダゲスタン共和国への侵入などを契機とし、この勢力に対して、連邦軍による武力行使を開始した(第二次チェチェン紛争)。02(同14)年4月の年次教書演説でプーチン大統領は、「既に軍事的段階は終了」との認識を示したが、その後も武力行使は行われた。
 このような中、同年10月にはチェチェン武装勢力によるモスクワ市劇場占拠事件、04(同16)年9月には北オセチア共和国での学校占拠事件が発生するなど、武装勢力側のテロ活動が頻発した。プーチン政権は、武装勢力掃討作戦を徹底するとともに、昨年、「国家反テロ委員会」を設置し、新たなテロ対策法を制定するなど国家機関が全体として効果的にテロ対策に取り組むための基盤の強化を進めている。また、同政権は、独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)、NATOなどとも対テロ協力を推進している。
 一方、チェチェン共和国内では、03(同15)年の新たな共和国憲法の採択や05(同17)年の共和国議会選挙の実施など連邦政府によるチェチェン安定化のための施策が進められている。また、連邦政府による掃討(そうとう)作戦の結果、独立派武装勢力の最強硬派とみられていたバサエフを始めとする一連の独立派指導者が死亡するに至っているが、チェチェン武装勢力は完全には排除されておらず、依然予断を許さない状況にある。

 

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